「選手は12球団でも1番」なのに…3位低迷は「絶対おかしい」 オスナを突き動かす仲間への愛

ソフトバンクのロベルト・オスナ【写真:荒川祐史】
ソフトバンクのロベルト・オスナ【写真:荒川祐史】

選手の能力は「12球団の中でも間違いなく1番」と言うものの…

 仲間たちのことを思い、あえて口を開いた。チームの状況を憂い、ソフトバンクのロベルト・オスナ投手が思いを語ったのは8月13日のことだった。3位と苦戦が続く現状に発した「もう少し期待してきた」の言葉。鷹フルではオスナに再び単独インタビュー。その発言の根底にあった意味、「ファミリー」だと表現するチームメートへの“愛”に迫った。

 オスナが最初に口を開いたのは13日の日本ハム戦(PayPayドーム)後だった。2点ビハインドの9回に登板すると、1回無失点。自らの役割を果たした。首位オリックスとのゲーム差は広がり、4位の楽天が迫ってくる。波に乗り切れない状況に「もう少し期待してきた」と、ジレンマを抱えていることをハッキリと明かした。

 オスナはここまで37試合に登板して19セーブ、防御率0.74。7月24日のロッテ戦(ZOZOマリン)ではサヨナラ弾を浴びて1敗を喫したが、クローザーとしての役割をほぼ完璧にこなしている。その中で感じるジレンマとはどんなものなのか?

「このチームの選手たちの能力だけで言ったら、12球団の中でも間違いなく1番だと思う。信じられないくらいのタレントがいる。このチームの力を考えたら、3位って絶対におかしい」

 昨季途中から在籍したロッテからホークスに移籍。入団会見ではハッキリと「優勝に貢献したい強い気持ちで入団させていただきました」と語った。リーグ優勝、日本一の喜びを味わうためにホークスに来たが、現状は3位。選手が持つ能力はオスナのキャリアの中でも際立っていても、3位という現状に「おかしい」と言う。

「自分には責任がある。チームメートと仲良くする(ことが責任だと言う)わけじゃないですけど、いいチームメートと、いいピッチングをして、そのためにいい準備をする。その責任があって、動いていると思います。選手は100%、勝つためにすごく努力をしています」

 チームメートたちの姿は間近で見ている。投手、特にブルペンのメンバーを中心に、ホークスの選手たちはレベルが高いという。遠征先では中継ぎを中心に一緒に食事に出かけ、技術面や取り組み、精神面の話も伝えている。「自分の学んできたことだったり、経験を彼らに伝えたいっていう気持ちがある」。自分の生き方が、少しでもホークスにとって財産になってほしいという強い思いが常にある。

 チームの歯車が噛み合わず、首位オリックスの背中が遠ざかる一方の現在。オスナほど実績がある投手でも「正直、難しい年であることは間違いない」と、モチベーションを保つことに苦労していると吐露する。それでも、ビハインドの展開でも登板を志願するなど、己を突き動かすのは、プロとして果たすべき責任とプライド、そして、チームメートへの愛に他ならない。

「チームメートは素晴らしい人たちばかりで、これまででも最高だ。彼らが100%の努力をしている時に、自分だけモチベーションが上がらないというのは違う。お互いをリスペクトするためにも100%の努力をするようにしている。チームメートのことはファミリーだと思っている。今年は本当の家族よりもチームメートの方が長い時間を過ごしていますし、彼らのためにもなんとか頑張っていきたいという気持ちが常にある」

 開幕戦は昨季まで在籍したロッテだった。オスナはテキーラ60本を相手のベンチに差し入れた。試合では相手同士となることは理解した上で、オスナは現在、過去の分け隔てなくチームメートをどこまでもリスペクトして「ファミリー」だと表現する。「去年までロッテにいたけど、代表して(慕ってくれる後輩は)朗希(佐々木)がそうだった。新しい家族ができることはすごく幸せなことだよ」。チームの未来、チームメートの未来を誰よりも思うからこそ、言葉は熱を帯びた。

「チームは会社があって、フロントがいて、監督、コーチがいて、そして選手がいる。勝つための準備であったり、全員が同じゴールに向かう人たちであるべきだと思う。コミュニケーションも含めて、チーム全体の雰囲気はもっといいものだと思っていた。勝つためには、各々が仕事をしなきゃいけない、働かないといけないんだ。球場に来て、お風呂に入って、3食無料で食べて、5つ星のホテルに泊まって、無料で飲み物を貰って……。そういうことをしに来ているわけじゃない。僕たちはここに勝ちに来ているんだ」

 プロ野球である以上、3位という現状が全て。どれだけ「常勝」だと言われようが、今の結果を受け入れて、ホークスは変わらないといけない。

(竹村岳 / Gaku Takemura)