代走・周東佑京はなぜ盗塁しなかった? ベンチの狙いと継投を巡るドタバタ

ソフトバンク・周東佑京【写真:小池義弘】
ソフトバンク・周東佑京【写真:小池義弘】

6回に同点に追いつかれると、堪らず藤本博史監督はベンチを飛び出そうとしたが…

■ロッテ 5ー4 ソフトバンク(24日・ZOZOマリン)

 ソフトバンクは24日、敵地・ZOZOマリンスタジアムで行われたロッテ戦に5-4で逆転負けを喫した。初回に柳田悠岐外野手の18号3ランで先制。4回にも近藤健介外野手が20号ソロを放ち、4点のリードを奪ったが、2点リードの6回に武田翔太投手が同点に追いつかれ、7回には又吉克樹投手が勝ち越し点を奪われた。2位・ロッテとの直接対決に負け越し、その差は3.5ゲームに拡大した。

 幸先良く4点を先行し、先発のベテラン和田毅投手が5回まで2失点と粘りの投球を見せた。5回2死三塁で前日3本塁打のポランコを迎えたが、フルカウントの6球目、133キロのスライダーを外角低めいっぱいに決めて見逃し三振に。窮地を脱する1球に、42歳はマウンド上で雄叫びをあげた。

 2点リードのまま逃げ切りを図った藤本博史監督の継投策に綻びが出た。守護神のロベルト・オスナ投手が背中に軽い張りを訴えたため、6回は本来の勝ちパターンではない武田がマウンドへ。1死から安田、ブロッソー、田村、岡と4連打を浴びて、試合を振り出しに戻された。7回には又吉が2死二塁から石川に中前適時打を浴びて勝ち越し点を献上。これが決勝点になった。

 今季初の柳田と近藤のアベック弾が飛び出し、ベテランの和田が気迫のこもった投球を見せた。勝ちに繋がりそうな展開の中で痛すぎる逆転負け。この試合では、ベンチのドタバタぶりが窺えるシーンもあった。

 6回に武田が同点に追いつかれると、藤本博史監督は堪らず、左の藤原を迎えるところで、田浦文丸投手への交代を告げようとベンチを飛び出そうとした。森浩之ヘッドコーチ、斉藤和巳1軍投手コーチに引き留められて、踵を返してベンチに腰を下ろした。

 実はこの場面、まだ田浦の準備ができていなかったという。ブルペンでキャッチボールを始めたばかりで、投球練習は行っておらず、登板できる状況ではなかった。指揮官の窮状が伝わる場面だった。

 1点を追う8回の攻撃では途中出場の川瀬晃内野手が四球で出塁。すぐさま代走に周東佑京内野手を送った。12球団屈指の脚力を誇る周東だけに盗塁を仕掛け、得点圏に走者を進めたい思惑かと思いきや、周東はスタートを切らず。代打のデスパイネは一度もスイングすることなく、見逃し三振に倒れた。

 結果的に盗塁を仕掛けることなく残塁となった周東の代走起用にはどんな狙いがあったのか?

 首脳陣の1人は「普通であれば、代打を出したら走らない。真っ直ぐが来たらデスパイネに打ってもらいたい、というところで、2ストライクまでは(盗塁しない)となる。真っ直ぐ系が多くなる、というのを引き出してデスパイネに打ってもらいたい、というのがあった」と明かす。

 周東の足でワンヒットで得点が狙える状況にするのではなく、ロッテバッテリーに周東の足を警戒させて、デスパイネに対してストレート系のボールを引き出そうという狙いだった。とはいえ、ここまで打率.088、150キロを超える真っ直ぐをデスパイネはなかなか捉えきれていなかった。1点ビハインドの終盤で切り札・周東を投入したのだから、勝負をかけても良かった。

 勝負手がハマらず、痛い逆転負けを喫したホークス。2位のロッテと3.5ゲーム差に広がり、25日から対戦する4位の楽天とは5ゲーム差となった。残り35試合。クライマックスシリーズ進出をかけた戦いは、激しさを増してくる。

(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)