中村晃が提案した決起集会に“救われた” 黒星直後の津森宥紀が胸を打たれた一言

ソフトバンク・津森宥紀(中央)【写真:荒川祐史】
ソフトバンク・津森宥紀(中央)【写真:荒川祐史】

7月23日のロッテ戦で今季3敗目…試合後に千葉市内で決起集会が開催

 自覚も責任も、突きつけてもらうような言葉だった。ソフトバンクは7月の戦いを7勝14敗と大きく負け越し。7日の楽天戦(楽天モバイル)からは、54年ぶりの12連敗を喫してしまった。23日のロッテ戦(ZOZOマリン)では、津森宥紀投手がサヨナラ打を許して敗戦投手となった。その試合後に開催された決起集会。中村晃外野手に言われた一言に、津森は胸を打たれたという。

 23日のロッテ戦では、同点の延長10回からマウンドへ。1死から佐藤都に二塁打、続く茶谷にも中前打と一、三塁のピンチを迎える。藤岡を四球で満塁とし、中村奨は一邪飛でなんとか2死満塁にまでしてみせた。しかし、最後は安田に右前打を浴びてサヨナラで敗戦。一塁の中村晃も横っ飛びでミットを伸ばしたが、そのわずか先を抜けていった。歓喜の輪を背にして、一歩ずつ三塁ベンチへと引き上げるしかなかった。

 津森にとって今季の3敗目。それ以上に、10連敗中だったチームの悪い流れを止められなかったことが悔しかった。試合後に中村晃が提案し、ほとんどの選手が千葉市内の飲食店に集まった。黒星の直後に参加した津森も「選手みんなでご飯に行って、切り替えられるのは早かったですね」と感謝する。2019年ドラフト3位での入団。翌年から新型コロナウイルスの影響もあり、シーズン中に大勢の選手だけで食事をするのは初めてだった。

 グラウンドを離れた食事の場。いつもならフランクな話もするかもしれないが、この時ばかりは、話題のほとんどが野球だったという。「テーブルごとに話はあったと思います」と雰囲気を代弁する。「晃さんの周りで、30歳くらいの選手と話をしていた時に、自分もこっそり聞いていたんです。甲斐さん、今宮さん、牧原(大)さんとか。たまたまその時に晃さんと目が合って…」。真っ直ぐな言葉に、胸を打たれた。

「自分はもう4年目なんですけど、結構1軍でも投げさせてもらっている。もう真ん中、中堅というか。晃さんには『お前が引っ張っていけ』という言葉をもらいました。結構真剣な話の途中だったので、なおさらそういう言葉はすごく響いたのはありました」

 野手と中継ぎ投手では試合へのルーティンも異なるため、日々のスケジュールも変わってくる。中村晃とは昨季に1度、食事をともにしたことがあったそうで、それ以来の同席だった。「すごいですね、晃さんは」と感謝しかない。「いろんな人が見ている中で、やることはしっかりやって。真面目というか、しっかりした姿も見せたいなと思いました」と、決意を新たにする瞬間だった。

 今季は1歳下で新人の大津亮介投手が34試合に登板。2歳下で6年目の田浦文丸投手が32試合に登板するなど、ブルペンにも少しずつ後輩ができるようになった。それでも津森は“引っ張る”という意識について「ちょっと抜けている部分があったと思いますし、楽しく“ワーワー”やっている感じの方が多かった。晃さんの言葉を聞いてからは、行動を見せられたらいいなって思っています」と背筋を伸ばす。

 アマチュア時代も、キャプテンの経験はないという。大学時代は「投手のリーダーとしてやっていました」と振り返る。津森はプロ入り後、長年ブルペンを支えてきた森唯斗投手と自主トレをともにした経験があり「森さんはやっぱりすごいですね。オンとオフの切り替えがちゃんとしているので、見習いたいと思います」と授かった教えはたくさんある。今まで見てきた先輩の背中が、自分を突き動かしてくれる。

 千葉での決起集会を経て、甲斐拓也捕手は「(チームの雰囲気も)変わってきたのかなと思います」と話していた。津森も「ご飯を食べたことで、みんなが一つになった感じはめっちゃありました」とその言葉に同調する。中村晃をはじめ「レギュラー」と呼ばれてきた先輩選手たち。その背中を見る後輩が、またその後輩へ。ホークスの歴史は受け継がれていく。

(竹村岳 / Gaku Takemura)