支配下登録の期限が7月31日に終了「今シーズンは厳しいだろうなと」
7月末で今季の支配下登録期限が終了した。ソフトバンクは7月28日にリリーフ左腕のダーウィンゾン・ヘルナンデス投手の加入を発表。期限を前に支配下登録70人の枠は埋まった。“残り1枠”を目指して奮闘してきた育成選手たちの心境とは、どんなものだったのだろうか。
オープン戦で打率.357、1本塁打とアピールをした育成2年目の川村友斗外野手も、期限までの支配下登録を強く意識していた1人だ。「せっかく今年、オープン戦で名前を覚えてもらったので、来年だったらもっと難しくなる。なんとか今年が勝負」と、“ラストチャンス”のつもりだった。4月には死球を受けて骨折。完治前に復帰するなど、必死な思いはヒシヒシと伝わってきた。
ただ、結果がついてこなかった。2軍に外野手が多かったこともあり、6、7月のほとんどを3軍で過ごした。期限が迫る中、最もアピールしたい時期に2軍でプレーすることさえできなかった。「6月に3軍に落ちた時は(期限まで)もう1か月半とかだったんで、正直『うわっ』と思っていたんですけど……。でも、そこはもう切り替えて、3軍でもコーチ陣に、『いつ2軍に呼ばれてもいいように状態を上げておくように』と言われていたので」。3軍首脳陣からの叱咤もあり、下を向くことなく日々を過ごしてきた。
3軍では数多くの打席機会を得た。「結構打てていた」。結果も出ており、良い感覚をつかんでいた。ただ、主に独立リーグと対戦する3軍と、NPBの投手と対戦する2軍ではレベルに大きな差があるのも事実。川村自身も相手投手のレベルの差は当然感じていたが、与えられた場所で結果を残し続けるしかなかった。
再び2軍に呼ばれたのは、7月も残り1週間を切った25日だった。体調不良者が出たこともあり、鳴尾浜でのウエスタン・リーグの阪神戦に急遽呼ばれると、「1番・右翼」でフル出場して1安打1盗塁。以降、出場した7月の2軍戦全試合で安打を放ち、28日の中日戦では3安打1盗塁、30日の同戦でも2安打と結果を出した。
対戦する投手のレベルに差がある中で、2軍で結果を出してみせた川村は、「3軍では自分のバッティングができた期間だったので、そのいいイメージのままで」という。「2軍に来たらほとんどみんな打てないんですけど、今の川村は今回初めて、今年の中で唯一、3軍と2軍で変わらないような感じで打てているんじゃないかなと思いますね」と、小久保裕紀2軍監督も川村を評価した。
一度は3軍に落ち、再びチャンスを得て2軍に上がってきた。しかし、2軍に昇格したその日の朝、川村の目には信じたくない情報が飛び込んできた。ヘルナンデス獲得の報道だった。「ツイッターを開いたら、70人目の補強って書いてあって『うわぁ…』と思った」。心に衝撃が走った瞬間だった。
「正直、もう2軍にすらいなかったので、今シーズンは厳しいだろうなと、ちょっと思っていたんです。ただ、いざ70人目が入るっていうのを見ると、『うわ…』と思って。でも(2軍でプレーしていた)奥村(政稔)さんや、重田(倫明)さん、仲田(慶介)とかの方がもっと悔しいはず。僕はそんなに思っちゃダメだなって。それはほんとに思いましたね。ずっと2軍でやってきて結果を出していた選手と、3軍に行っていた僕と、一緒にしたらいけない。僕がそんな態度とかに出したらダメだな、と。普通に、なんとかチームに貢献できるようにやっていくだけです」
2軍でのプレーを続けていた選手たちを思い、こう語っていた川村。「打率も2割打っていなかったんで。失うものはないっていうか、逆に開き直ってできました」。.170ほどだった打率も、現在は.235まで上げてきた。シーズンオフ、そして来シーズンの支配下昇格へと気持ちを切り替え、とにかく打ってアピールし続けていくしかない。
(上杉あずさ / Azusa Uesugi)