【連載・板東湧梧】読書のジャンルは意外に「腸活とか…」 男前右腕が今ハマっていること

ソフトバンク・板東湧梧【写真:藤浦一都】
ソフトバンク・板東湧梧【写真:藤浦一都】

オフから掲げてきた今季の目標は「シーズン15勝」今の板東を突き動かす思いは

 鷹フルがお届けする主力4選手による月イチ連載、板東湧梧投手の「7月後編」のテーマは「今ハマっていること」です。マイブームもしっかりと野球に繋がっており、今の心境はプロ入りをつかんだ2018年に似ているんだとか。今年の年始には、大谷翔平投手(エンゼルス)と同じ“目標設定”もしてみたそうです。板東投手の次回連載は8月28日(月)掲載の予定です。

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 今ハマっているということは「読書」だ。社会人時代には、年間100冊以上も読んでいたという。シーズン中でもあり、今はそんなには読めていないというが「今、社会人のプロに行く前と似た感じ(心境)になっているんです。その時もめちゃくちゃ読書していて、自分と向き合う時間がすごく多かった」と自己分析する。

 本のジャンルは「野球の本はあんまり読まないんですけど」という。日本語で「瞑想」を意味するメディテーションを、昨季から定期的に行うことでメンタル面の安定を図ってきた。「やっぱり、マインドの本が多いですね。心理学というか、脳科学というか。目標達成の本とか、あとは“腸活”とか睡眠とか。それが今は楽しいですね」と多岐にわたる。もちろん、全てがマウンドでのパフォーマンスのためだ。

 板東は2018年ドラフト4位でホークスに入団した。社会人で5年間を過ごした中で、特に2018年は「目標のために自分の気持ちを書き出したりして、高みに行くためにどうしたらいいのかっていうためにずっとやっていたので。そういう意味では絶対にプロに行くって気持ちでやっていました」という。プロ入りという目標が自分自身を突き動かした、成功体験とも言える年だった。

 今や世界的スーパースターになった大谷翔平投手(エンゼルス)。花巻東高校時代には9つの目標を書き出し、それらを叶えるためにさらに細かい9つの目標を書き出す“マンダラート(マンダラチャート)”を作成していた。大谷が掲げていた最大の目標は「ドラ1 8球団」。「スライダーのキレ」「リストの強化」など技術面から「愛される人間」「ゴミ拾い」といった人間性の部分まで、確固たる目標が大谷の全てを作り上げた。

 大谷と似たような目標設定シートを社会人時代に板東もノートに書き出し、考えをアウトプットしたことがある。2018年は「その時の目標はプロに行くためだったので『ドラフト1位、12球団』みたいに書いていました。この前、残っていたのを引っ張り出して見たら『頑張ってたんやな』って思いました」。自分の字からも“熱”を感じ「熱かったっすね」と笑うほどだ。

 シーズン15勝を掲げて迎えた2023年。「今年も書きました」と字にすることで目標をアウトプットした。「書きましたけど、まだ細分化できていないというか。大きい目標はできているんですけど、中期目標とか短期目標とか、そこまでできていない」と自己分析する。どこまでも自分と向き合うために、取り組んでいる1つが読書だ。

 マンダラチャートは“9×9”、計81個のマスで形成されている。簡単ではなさそうな数字で、年始に同様のシートを書いてみた板東でも「なかなか出てこない項目もある」という。「バランスよく自分でも、自分だけのことじゃなくて人のこととか、そういうところもできていないと心は安定しない。そこに気がつけてよかったです」。自分の1球が勝敗を左右する投手。周囲のことまで考える姿も板東らしい。

 心身の充実を表す「心技体」という言葉がある。心、技術、肉体。パフォーマンスを形成する3つの要素で、どれを重要視するのかは人それぞれだ。「面白いですよね、こないだ僕もゼキ(大関友久投手)とその話をしました。大谷さんなら『体』が一番最初かな、僕なら『技』かなって話をしました」。板東なりに考える“順番”を聞いてみると「今はマインドにフォーカスしているのもあって心だと思います」。シーズンもまだまだ途中。答え合わせはこの先も続いていきそうだ。

 オールスターブレークも挟み、23日のロッテ戦(ZOZOマリン)では5回2失点の内容だった。後半戦に向けての目標を聞くと、こう答えが返ってきた。「ここからローテーションで回れば、10勝も夢じゃないと思った。ちゃんと回れば登板も10回以上あるので。そこを1つ目標にしようと思っています」。自分らしさを忘れることなく、目標に向かって真っ直ぐに走る。

(竹村岳 / Gaku Takemura)