今の自分はもう、結果を出すしかない。待望の一発で、チームを連勝に導いた。ソフトバンクは26日のオリックス戦(京セラドーム)に7-1で快勝した。先発したカーター・スチュワート・ジュニア投手がNPB5年目で初勝利。今宮健太内野手が4号ソロで同点とし、甲斐拓也捕手が勝ち越しの6号3ランで試合を決めた。24日まで喫した12連敗というチームの状況を、レギュラーの2人はどう見ていたのか。その心境に迫った。
同点の5回だった。安打と四球で1死一、二塁として甲斐が打席に立つと宮城の初球を振り切った。打球は左中間の最深部に着弾する3ランとなった。「何とかしようと、その思いだけでした。しっかりと自分のスイングができました」と感触を確かめる。これが決勝点となったのだから、スチュワートにとっても大きすぎる援護点だった。
7月7日の楽天戦(楽天モバイルパーク)から、チームは12連敗を喫した。54年ぶりの大型連敗。甲斐にとっても、もちろんキャリアで初めての出来事だった。全ての試合で「9番・捕手」としてスタメンマスクを託されたが、黒星だけが並んでしまった状況をどう見ていたのか。
「もちろん苦しかったですし。それはもうチームみんなが、そう思っていました。チームみんなが勝ちたい気持ちでやっていて、なかなかうまいこと結果がいかなかったので。悔しい毎日を送っていました。ただ、僕も初めてこういう経験をしましたけど、改めて同じ方向を向いて、チームが行っている感じは今はします」
チームの空気に、確かな変化を感じているという。キッカケはもちろん、千葉での決起集会だろう。23日のロッテ戦に敗れ、11連敗となった後、千葉市内でほとんどの選手が集まった。食事会を提案したのは中村晃外野手だったといい、甲斐もその考えには頭を下げるしかない。会の雰囲気について、こう代弁した。
「先輩たちが動いてくれて。声をかけてくれて。先輩たちと話をして、もう一度ここからやっていこうという話にもなりましたし、改めてそういう意味でも、この連敗はもちろんすべきではないですけど。また(チームの雰囲気も)変わってきたのかなと思います」
24日のロッテ戦(ZOZOマリン)では先発の石川柊太投手が7回無失点。25日のオリックス戦では有原航平投手が9回完封勝利、この日はスチュワートが6回1失点と先発が試合を作る展開が続いている。「いつも助け合いにはなると思いますけど、バッテリー間でやることをやって、勝ちに繋げていけたら」と、すぐに切り替えて前を向く姿も甲斐らしかった。
今宮は初回1死から左翼線に二塁打。チーム初安打を放つと、迎えた4回無死だ。宮城の143キロを振り抜くと、打球は左中間スタンドに伸びていった。7月6日の日本ハム戦(PayPayドーム)以来の4号ソロ。「いいスイングができた結果だと思います」と久々の感触を握りしめる。打撃の状態についても「打っていかないとこの世界はゲームに出られない」と、試行錯誤が続くような状態だった。
試合前の時点で打率.234。対右投手は.229、対左投手は.237で、相手先発が右投手の時は先発を外れることも目立ってきた。昨季はキャリアハイの打率.296を記録して、自分の居場所を取り戻すシーズンとなった。結果でチームを引っ張って、今季こそ3年ぶりの優勝を掴み、その中心となるはずだった。7月は19試合を終えて、スタメン落ちが8試合。苦しい数字が並ぶ現状に対しても、前を見るしかなかった。
「そういうものも腐らずにやるしかないので、この先も頑張ります」
甲斐も今宮も、立派なチームの主力。グラウンドに立ち、チームを“勝たせる”側の選手だろう。その責任も背負いながら、甲斐は「僕たちがしっかりと動いてね、後輩にいいものを見せていけるように僕たちもやっていきたいと思います」とキッパリと誓った。試合前の声出しでは若手が盛り上げて、試合では全員が一丸となって白星を奪いに行っている。後ろを向いている選手なんて、誰1人いない。