1軍で突きつけられた“イニングまたぎ”の課題 尾形崇斗が目指す「日本一の投手」の道

ソフトバンク・尾形崇斗【写真:藤浦一都】
ソフトバンク・尾形崇斗【写真:藤浦一都】

登録抹消になるまで1軍で8試合に登板、失点は全て“イニングまたぎ”

「トップのピッチャーを目指していくなら……」

 ソフトバンクの尾形崇斗投手が、決意新たにしている。7月8日に出場選手登録を抹消された尾形は、21日のウエスタン・リーグのオリックス戦(タマスタ筑後)で2軍降格後初登板。0-0の延長10回にマウンドへ上がると、相手の上位打線を3者連続三振。150キロ超えの直球で押し込み、雄叫びを上げた。2軍ではここまで20試合の登板で1勝0敗6セーブ、防御率は0.75と圧倒的な投球を見せている。

 尾形は今季が6年目。開幕1軍を逃したものの、5月31日に初昇格。同日の中日戦(PayPayドーム)に今季初登板すると、1回を無安打無失点に抑えた。6月3日の広島戦(マツダスタジアム)でも1回無安打無失点。今季こそは2軍同様のパフォーマンスを1軍でも発揮してくれるのでは、と期待を抱かせた。

 ところが、6月11日の巨人戦(PayPayドーム)でイニングをまたぐと、1回1/3で3失点。プロ初黒星を喫した。登録抹消となるまで、1軍で8試合に登板し、失点した試合は全て複数回を投げた時のもの。1イニングだけならば0点に封じており、“イニングまたぎ”が課題であることは明白だった。

 尾形はその現実をしっかりと受け止めている。「1イニングの力勝負なら戦えると思いましたけど、イニングを重ねると、球が高いとも言われましたし、スタミナ面とか配球面、球の選択という点で課題が出ました」と振り返る。ファームでは“守護神”を任され、意気に感じて持てる力を存分に発揮してきた。だが、1軍はそう簡単にはいかない。まだまだ信頼を勝ち取りにいかないといけない立場。ビハインドの試合で複数イニングを託されることもあるし、与えられた場所で結果を積み重ねていく必要がある。

「トップのピッチャーを目指していくなら、(複数)イニングを投げられないより投げられた方がいい」と尾形はうなずく。「何でもできた方がいいですよね。例えば、山本由伸さん(オリックス)は先発ですけど、抑えをやれって言われたらできるはずですよね」と、“日本のエース”の名前を例に挙げた。尾形には「日本一のピッチャーになりたい」という夢がある。それを叶えるためには、目の前の与えられたこと全てに応えていかなければならないと考えている。

 1イニング限定での登板を重ねていたら、1軍でも結果を出し続けられたかもしれない。ただ、尾形は「課題がわかってよかった」と前向きに受け止めている。「1イニングを出し切るのが持ち味だけど、それを生かしながら、イニング数を増やしていきたいと」と練習に取り組む。自分らしさを大事にしながら、新たな境地の開拓へ。「何でもできてこそトップ」と、再びファームで腕を振る覚悟だ。

(上杉あずさ / Azusa Uesugi)