コーチに言われた「誰が見ているかわからない」 迫る期限に緒方理貢の胸中は…

ソフトバンク・緒方理貢【写真:上杉あずさ】
ソフトバンク・緒方理貢【写真:上杉あずさ】

昨季は支配下昇格候補に挙がるも、育成3年目の7月は3軍でのプレーが中心

 厳しい現実の中でもやるべきことに集中している。育成3年目を迎えた緒方理貢内野手は、プロ入りして3度目の7月を3軍で過ごしている。昨季はウエスタン・リーグ盗塁王に輝き、支配下昇格の候補にも名前が挙がった。ところが、今季、2軍公式戦には5月31日の広島戦を最後に出場しておらず、現在は3軍が主戦場になっている。

 育成選手にとって「3年目」は1つの節目でもある。3年目までに支配下昇格が叶わなければ、規定によって自動的に自由契約になるからだ。その「3年目」の支配下登録期限となる7月末を前に、2軍で勝負するチャンスを得られていない。モヤモヤした気持ちは当然あるはず。ただ、緒方は与えられた場所で、自分の持ち味を発揮している。3軍、4軍のファーム非公式戦成績は7月9日時点で44試合に出場して、打率.324、盗塁数は22盗塁となっている。

 11日からタマスタ筑後で行われた四国ILの香川戦では初戦で3安打4盗塁。2戦目には1安打1打点3盗塁を記録し、2試合で4安打7盗塁をマークした。3軍では圧倒的な活躍を見せているが、緒方は「2軍にいた時から、試合に出続けることができれば、これぐらいの結果は出せるってずっと思っていたので」と淡々と語る。2軍では代走からの途中出場も多く、ボールの見え方や課題の速い直球への対応などで苦戦していた。

 今年は何より「体が1番元気だったので、去年より数字は出るやろうなっていう感じでした」と頷く。1年目は怪我に泣いたが、3年目となり、コンディションを維持できていることも自信に繋がる。打ち方も変えた。これまでの高い位置にあったグリップを、今は低い位置にして始動する。「城所(龍磨3軍打撃)コーチと話して、自分の身体の使い方的にそうした方がいいんじゃないかって。自分の中で納得した打席が多くなりました」と手応えを感じていた。

 昨季から課題は守備だと言われてきた。内野手登録ながら、2軍では外野手としてもプレー。3軍でも内外野両方の守備に就く。ポジションが定まらないことに戸惑いもあったが、徐々に方向性が見えてきた。「上(1軍)に行くんだったら、内野をやっておいた方がいいよってコーチ陣にも言われました。自分(の思い)もその方向だったので。今は自分がどうすれば上に行けるのかっていうのをちゃんとコーチと話し合えてやれているので、いい感じです」とモヤモヤも晴れたようだ。

「両方出来た方がいいっていう話になったし、やっぱり1軍ってなったら、もう外野はほぼ決まっているじゃないですか。やっぱり二遊間を欲しているところがあると思うので。2軍ではなかなかやれなかったので、今3軍でやれるんだったら、やっておいた方がいいんじゃないかってなって、今そうしているところです」

 コーチ陣も緒方を1軍で戦える選手にするため、全面的にバックアップしている。居場所は3軍であろうと「誰が見てるかわからんよっていうのは常に言われているので」と全力で自身の持ち味を発揮しようとプレーしている。最大の持ち味である俊足は、塁に出さえすれば、いつでも披露するつもり。「ここで走れなかったら、上のレベルじゃ走れないと思っているので」とニヤリと笑う。厳しい現状は理解している。「本当に誰が見てるかわからないんで、そこだけを意識して、とにかく結果を出してって感じです」。言葉の端々に、3年目の覚悟を滲ませていた。

(上杉あずさ / Azusa Uesugi)