2死三塁から古賀に粘られる…最後は見逃し三振で「イメージ通りでした」
打ちひしがれることなく、前だけを見ている。12日の西武戦で1イニングを無失点に抑えたソフトバンクの大津亮介投手。かつて自分がベンチで流してしまった悔し涙が、糧になっている。ドラフト2位ルーキーが北九州の地で見せた意地と成長に迫った。
2点リードされた8回にマウンドへ。先頭打者のマキノンにカーブを左前に運ばれ、山野辺の犠打で1死二塁とされた。続く長谷川は5球目で遊ゴロに打ち取った。2死三塁となり、古賀を打席に迎えた。変化球を使って追い込むと、直球を続け、152キロも計測した。ファウルで粘られたが、9球目で勝負は決した。高めからストライクゾーンに入っていくスライダーで見逃し三振。マウンド上で吠え「イメージ通りでした」と振り返った。
7月6日の日本ハム戦(PayPayドーム)、9日の楽天戦(楽天生命パーク)で、ともに1回を投げて1失点。2死からソロアーチを被弾するという同じ流れで、2戦連続失点はプロで初めてだった。この日はチームのみならず、自身にとっても結果が大事な登板。「ホームランの1点だったので、気は抜いていなかったんですけど、前回みたいなことが起きないように慎重になりました」。闘志だけは絶対に失わないようにしていた。
両翼92メートルの北九州市民球場。同じ失敗をしないためにも、一発だけには細心の注意を払っていた。3試合連続の失点だけは誰よりも自分が許せない。古賀に粘れられている時の心境も「絶対に打たせない、一歩も引かないって思っていました。追い込んでからは(古賀が)真っ直ぐ張りで強くきていると思っていた。最後は高めから、イメージ通りでした」と、うなずきながら振り返る。
6日、9日と続けて失点し、12日の登板を迎えた。その間の心境を「1試合が終わったら切り替える。リセットするつもりでやっています」と言う。マウンドでゼロを並べることでしか悔しい気持ちを晴らすことはできない。「なるべく(間隔が)空きすぎないように、早く投げたいって思っていました」。いつも以上にマウンドへの執着心を抱いていた期間だった。
大津は自分自身を「負けず嫌いです」と表現する。降板後に悔しい表情を浮かべることも多く、2失点した6月10日の巨人戦(PayPayドーム)ではベンチで悔し涙を浮かべ、周東佑京内野手ら先輩から声をかけられた。多彩な変化球はもちろん、気持ちで向かっていく姿勢も武器。「切り替える」という言葉が意外だったが、それも“あの日”の悔し涙が自分を成長させてくれたからだ。
「最初はめっちゃ引きずっていたんですけど、気持ちの切り替えができなかったら1年間投げられないなって思って。1日1日、切り替えです。良いピッチングをしても、次は切り替えです。(具体的なキッカケは)1回、悔し泣きした時から一歩成長できたかなって思っていて。すごくいい経験だった。気持ちの整理の仕方は勉強になった試合でした」
ルーキーイヤーの今季、ここまで32試合に登板して2勝0敗、11ホールド。防御率2.89と堂々の結果を残す。それでも「最終的なトータルの結果なので」と話す表情は、確実にプロとしての頼もしさが増している。「(打たれたら)悔しいんですけどね。切り替えてやっています。今月はずっとゼロを並べたいと思います」。もっといい投手になりたい、チームを助けたいという思いがあるから、大津は強くなれる。
(竹村岳 / Gaku Takemura)