笠谷俊介への“厳しい注文”「自己満足で終わるな」 斉藤和巳コーチから感じる期待

ソフトバンク・笠谷俊介(左)【写真:竹村岳】
ソフトバンク・笠谷俊介(左)【写真:竹村岳】

5月に左肘の炎症も1か月で復帰…予定よりも早く実戦復帰できた理由とは

 自分にピッタリな言葉をもらった。ソフトバンクの笠谷俊介投手が9日に出場選手登録された。今季初の1軍昇格に「リハビリの期間が、すごくいい時間になりました」と振り返る。左肘の炎症でリハビリ組にいた期間があったが、当初の予定よりも早く、実戦復帰できたのには理由があった。そして、斉藤和巳投手コーチにかけられた言葉とは――。

 ウエスタン・リーグでは19試合に登板して防御率1.00の好成績。18イニングを投げて28三振を奪うなど、リリーフとして調整を重ねてきた。5月からは左肘の炎症もあり、ノースロー調整となる期間もあったが「朝の練習前に、体の状態をチェックして、エクササイズもして。それで試合で投げていくと『あ、これかもな』みたいなのがあって(結果も)ついてきた感じです」と前だけを向いてきた。

 左肘を痛めた当初、復帰までは2か月ほどかかる見込みだった。それでも、6月上旬には実戦マウンドに帰ってくるなど、予定を何倍も前倒ししてみせた。「今年ダメならクビだと思っています」と話していたほど、悲壮な覚悟で過ごす9年目のシーズン。早期復帰の背景にあったのは、自分の体をしっかりと知った上での、執念だった。

「自分の中で『リハビリは1か月で終わる』って思わせていて。その1か月でできることは、野球をする時は野球に集中しよう、家に帰ったらゆっくりしようっていうのを割り振りができていて。肘が炎症を起こして、投げられない時間もありましたけど、より良くするためにこの時間を使おうと思ったら、ネガティブになることは1つもなかったです」

 ノースロー調整を「仕方ないこと」と受け入れたが「(最初にノースローは)2週間くらいと言われたんですけど、僕は『それじゃあ無理なので。全部含めて、1か月で行きます』って、プランを1か月にしてもらった」と最短復帰のためだけに日々を過ごした。まず行ったのは、肘に溜まっていた水を抜くための注射。「簡単ですよ。チューって抜くだけですから」と麻酔も打たずに、体に針を入れた。自分の考えを理解してくれたスタッフには当然、感謝しかない。

「僕ももう9年目で、自分の体はわかってきて。2か月はちょっと長いですって(伝えて)。先発なら時間はかかりますけど、中継ぎですし。一番早く投げられる術をトレーナーの方々が考えてくれて、それプラス、自分のやりたいこともできた。無理していたら無理しているってわかるので。『無理をしていたらすぐに言うので』って、そんな感じで(リハビリは)始まりました」

 2軍でも好成績を残し、1軍への切符をつかんだ。ファームでの取り組みと数字について「いい日もあれば悪い日もあるんですけど。(これまでは)『今日はここが良くなかった』ってあやふやな部分はあったんですけど、それもちょっとずつわかってきている。あとはそれをどれだけ修正できるか」と話す。持つ才能は一級品。調子の波を少なくして、自分の球を試合で表現できるかが課題だった。少しずつ、表情に自信が戻ってきている。

「練習で自己満足じゃなくて、そこに着目して試合前の取り組み、準備をすればいいんじゃないかなって思います。ストライクゾーンがあるなら最初は端は狙わずに。『打てるものなら打ってみろ』くらいで。外なら、外の甘めとか。気持ちはそういうふうに持っていっています。2ストライクにしたら、三振を取りに行くとか」

 この日、斉藤和コーチに見守られながら、キャッチボールを行った。かけられた言葉は「自己満足で終わるな」。いい球を投げることも投手の仕事だが、最終的な目標は打者を抑えることであり、チームが勝つこと。「どんなに悪い球でも抑えれば勝ちなので。バッターに打たれない球を投げたいです」と、その言葉を胸にマウンドに上がるつもりだ。ようやく巡ってきたこのチャンスを、死に物狂いで掴みにいく。

「(斉藤和コーチには)気にかけてもらっているので、なんとかその期待に応えられたらと思います」と背筋を真っ直ぐに伸ばした。投手陣が苦しんでいる夏場の戦い。まずはブルペンから、必ずチームの戦力になる。

(竹村岳 / Gaku Takemura)