社会人時代に登板経験のある北九州市民球場…当時の監督に言われた厳しい言葉
苦い思い出も、原点も、北九州にある。ソフトバンクは11日、ファーム施設「HAWKS ベースボールパーク筑後」で投手練習を行った。12日の西武戦(北九州)で先発する板東湧梧投手はキャッチボールなどで調整。4連敗で回ってきた登板に「嫌でもみんな気になっている部分だと思う。自分も野手にも助けてもらっているので、引っ張っていきたい」と意気込んだ。北九州のマウンドには、社会人時代に思い出があるという。
前回登板となった5日の日本ハム戦(PayPayドーム)で7回1失点。先発として今季初勝利をつかみ、1週間を過ごした。「負けた後よりもポジティブになれるというか。うまいこと自分の中で整理して、いいバランスに持っていけたら」と前だけを向く。だからこそ、今回の登板が重要となる。「球場関係なく、低めに集める投球というのはずっと言われていますし、永遠の課題かなと思います」と力を込めた。
北九州市民球場は、ホークスにとっても準本拠地にあたる。両翼92メートル、中堅119メートルの狭さが特徴の1つだ。板東はJR東日本時代に登板経験があるという。懐かしそうに明かしたのは、苦い思い出だ。
「ホームランはいっぱい打たれました。いっぱい打たれて、オーバースローをクビになった記憶があります。こんなホームラン打たれるんやってくらい打たれたので」
記憶から引っ張り出すようにして、おぼろげに話した。「プロにいった年(2018年)か、その前の年くらい。内容も覚えていない」というが、当時の監督から「『サイドスローにしろ』って言われた気がします」と、はっきりとした口調で言った。「サイドスローを試したけどダメだった。結局、低めに投げる大切さをその時に一番学びました。だからすごく覚えています」。今では笑える思い出だ。
「(サイドスローに)取り組んで、自分の中ではめちゃくちゃサイドのつもりだったんですけど、それがスリークォーターくらいで『あんまり変わっていないよ』みたいな話になって(笑)。自分の中では逆に手応えをつかんで、低めに集められるようになりました。(オーバースローには)なだらかに戻っていきました」
サイドスローのままなら、今の板東湧梧はいなかったかもしれない……。板東の代名詞でもあるコントロール。何度も味わってきたはずの大切さを改めて学ぶほど、狭い球場であることは間違いない。「自分自身、球が重いタイプではない。気持ちよくスイングさせてしまうと飛んでしまうので。今も昔も変わらず、まずはタイミングをずらすのがポイントかなと思います」と、12日の登板に向けても続けた。
8月に入れば、6連戦が続く厳しい日程となる。そこで首脳陣は先発陣を改めて固定する考えを示しており、板東にとってもアピールしたい登板だ。「オールスター前の、多分最後の登板になると思う。そのローテ、6枚に入れるように。大事な試合かなと思います」。4連敗中のチームにとっても、板東個人にとっても、勝つことが何よりの“薬”となるはず。自分がチームを勝たせる時だ。
(竹村岳 / Gaku Takemura)