7月12日の「鷹の祭典」は実家から自転車で3分の距離…1軍初昇格はあるか?
ロマン溢れる打撃とキャラクターを見せている。ソフトバンクのドラフト3位ルーキー生海外野手のことだ。6月27日にタマスタ筑後で行われたウエスタン・リーグの中日戦では6回2死走者なしの場面で4号ソロ本塁打を放つなど、4打数3安打の大活躍。小久保裕紀2軍監督も「あの打席で期待するのはホームラン。2ボールから変化球を狙って打ったホームランだったんで、見事でしたね」と絶賛していた。
2ボールとなった時点で、生海は狙いを定めた。「絶対に変化球やろうな。すごい(外れた)ボール2球やったんで、これは入れてくるやろうなと思った」。読み通りに肩口から入ってきたスライダーを完璧に捉え、右翼に高々と放物線を描いた。「振ったらなんか飛んでった」と豪快なホームランに“豪快な”コメントを残した。
配球を読んでの一発だったというから、普段から打席の中であれこれと考えを巡らせているのだろうか。そんな問いかけに生海は「そうですね、久しぶりに(配球を)読みました」と笑い飛ばした。第1打席と第3打席に放ったヒットは「あ、適当です」。まるで柳田悠岐外野手のような独特な“生海節”が飛び出した。
もちろん、プロの世界は“適当”で打てるほど甘くはない。そこには生海なりに試行錯誤を繰り返し、行き着いたところの“適当さ”がある。「多分何かしら考えているんじゃないですか。無意識ですね。考えすぎたら、あまり良くないんですよね、自分的に」。考えて野球をすることは必要だが、考え過ぎて空回りしては本末転倒だ。「スパッと振るみたいな、そういう意識だけ」。まだプロ1年目。これから様々な経験をする中で、生海の“適当さ”も研ぎ澄まされていくのかもしれない。
打撃フォームも改良を重ねてきた。構えた時の手の位置を今までより身体に近付けた。「身体の近くからバットを出したいなと思って。今まで少し離していたんですけど、そうするとこっち(身体に近い所)に持ってくるタイミングが難しくて」。スムーズにバットを出せる位置を模索した。今までのフォームは「“村神様”に似ている」と言われてきた。当の本人も「カッコつけて真似していました」と明かして、笑いを誘った。
6月15日には1軍に初合流。出場選手登録はされなかったが、1軍の選手たちとの練習に参加し、その差を肌で感じた。「まずインコースが来て、そこから1軍の選手は逃げられるというか、ファウルにする技術がある。自分はまだフェアゾーンに飛んでしまうんですよね、詰まった打球が。だけど、やっぱそこで厳しい球をファウルにできたら、もう1球チャンスがあるので。そういうのがすごいなと」。
生海はインコースのボールに対して身体が開いてしまうが、1軍の選手たちは違った。「1軍の選手は多分、身体を開かずに当てられるのでボールがファウルゾーンに行くんですよね」。先輩ともコミュニケーションを取り、刺激を受ける時間となったようだ。藤本博史監督からは「チャンスはあると思うから」と声もかけられた。7月12日には「実家からチャリで3分くらい」の北九州市民球場で「鷹の祭典」が開催される。自身の”聖地”での1軍デビューはあるか? ファームでインパクトを残しているルーキーの今後から目が離せない。
(上杉あずさ / Azusa Uesugi)