嬉しい“プロ初白星”だった。27日に行われたウエスタン・リーグの中日戦。育成ドラフト3巡目ルーキーの木村光投手は5回を投げて3安打2失点と好投し、2軍公式戦14試合目の登板でついに初勝利を挙げた。待望の瞬間に、試合後は「勝てたことは素直に嬉しいです」と表情をほころばせた。
立ち上がりに苦しみながらも要所を抑えて、3回まで無失点に切り抜けた。1点リードの4回に内野安打と四球でピンチを招き、適時打で同点に追いつかれた。初勝利はまたもお預けかと思われたが、バッテリーを組む渡邉陸捕手が5回に放った勝ち越し打が、木村光の初勝利を呼び込んだ。
育成新人ながら、開幕から2軍で登板を続ける。有原航平投手やジョー・ガンケル投手ら1軍クラスの投手陣が2軍で開幕を迎えたこともあり、若手のチャンスは限られていたが、その中でも貴重な登板機会を掴んでいた。2軍首脳陣も先発として起用していきたい考えは持っていたが、1軍昇格に備える投手陣の調整が優先されたため、開幕当初は中継ぎとして経験を積んだ。
5月14日の同リーグ阪神戦(鳴尾浜)で初先発のチャンスを得たが、3回1/3で5失点。ほろ苦い先発デビューとなった。以降もなかなか勝ち星を掴めず、6度の先発で4敗と黒星を重ねることに。6月13日の同リーグ阪神戦(タマスタ)では6回1失点と好投するも、同点のまま降板し、勝敗はつかなかった。
「全然勝てていないっていう現状があった。チームが勝てればいいんですけど、やっぱり自分の成績もしっかり残していかないといけない中で、ちょっと気にしているところはありました」と素直な思いを語る。1年目とはいえ、7月末の支配下登録期限は当然意識する。「ずっと2軍で投げさせていただいている以上、結果を残さなければならない立場にあると思っているので、しっかり結果にこだわってやっていきたいです」と自覚と覚悟が滲む。
「初勝利して一安心はしたんですけど、もっといいピッチングをしていかないと1軍には上がれないと思うので。もっともっとずっと突き詰めていかないとって感じです」。視線の先には“支配下登録”ではなく“1軍”がある。直近2試合で失点していた初回。この日は失点こそ免れたが、四球と失策でピンチを作り「そこは意識しながらやっていたんですけど、ああいう結果になってしまったんで、もうちょっと準備の方法を変えていかないといけないかなと感じました」と工夫の必要性を痛感した。
一方で収穫もあった。「スプリットが結構落ちていて、コントロールもできていた。バッターの反応からしても、真っ直ぐに近い感じで放れていたんじゃないかなっていうのは思いました」。5イニングで6つの三振を奪い、武器とするスプリットの変化に手応えを得た。
小久保2軍監督には「支配下っていうところをみんな見据えてやっているから、もうちょっと気を引き締めていけよ、みたいな話はされました」と喝を入れられた。「少ない枠で争っているので、もっと自分のいいところを出していかないといけない。自分は少ない失点で抑えるっていうのが、1番大事かなと思っています。ヒットは打たれるけど、点を取られないっていうところを重視して、安定したピッチングをすることが大事だと思う」と自分の持ち味を生かしたアピールを目指す。
木村光が先発した試合では、同期入団の生海外野手が3試合連続で本塁打を放っている。「今ずっと打ってもらっているんで、もうそろそろしっかり抑えていいところを見せないと」と頷く。グラウンド内外でも仲が良く「いくみん」と呼ぶ。同期との「いつかは1軍で一緒に」を実現させるためにも、まずは支配下登録を掴みに行く。