ソフトバンクは26日、「鷹の祭典 in東京ドーム」の楽天戦に1-3で敗れ、首位から陥落した。先発の和田毅投手が5回2失点。1点差に迫った7回には津森宥紀投手が3つの四球を与えて崩れ、リードを広げられた。この敗戦で36勝27敗2分、勝率.571となり、ロッテだけでなくオリックスにも抜かれて3位に転落した。
「鷹の祭典」の開幕戦。エメラルドグリーンに染まったスタンドからため息があふれた。柳田悠岐外野手のソロで1点差に迫り迎えた7回だ。この回からマウンドに上がった津森は先頭の山崎に四球を与えると、犠打と安田の遊撃への内野安打で1死一、二塁とされた。辰己にはこの日2つ目となる四球で満塁に。小深田に中前へ弾き返されて3点目を奪われた。
「腕は振れていたんですけど、制球が……」と苦しむ津森は、さらに続く小郷にも四球を与えて再び満塁のピンチを背負った。これ以上の失点は許されない場面。この窮地で津森の元に歩み寄り、一言、二言と声をかけたのが今宮健太内野手だった。この直後、津森は浅村を、今宮のもとに転がる遊ゴロで仕留めてさらなる失点を防ぎ、なんとか最小失点で切り抜けた。
厳しい言葉だったのか、それともゲキだったのか。どういった声をかけたのか、試合後の今宮に聞いた。
「小深田の時に凄くいい真っ直ぐを投げていたんです。結果、打たれてしまったけど、あの真っ直ぐが1番良かったって感じた。その後に、また四球を出したので『小深田の時のボールがめちゃくちゃ良かったからそれでいけ。それで打たれたらしょうがないんだから』って言いました」
結果的に津森は1点を失ったものの、ボール自体は悪くなかった。この日、最速では152キロをマーク。確かに制球には苦戦していたものの、交流戦後の休みもあり、開幕してから初めて登板間隔が1週間空いていたのも少なからず影響していた。遊撃の位置から見ていた今宮は、津森の心が揺れ動くのを感じ取った。
「なにか考えているんだろうな、というのは守っていて感じます。今日であれば、1番、津森にそれを感じました。いつものアイツとは違った。打たれて(気持ちが)フッてなるんで、それだったら打たれてもしょうがないと思うしかない。152キロも出た中で打たれたらしょうがないでしょ。それだけを言いに行きました」
今宮から見れば、決して投げているボールは悪くない。気持ちで向かっていき、どんどんストライクに投げ込んでいけばいい、と感じた。ただ見るに、津森は制球が安定しないこと、そして、真っ直ぐを打ち返されたことで弱気になっていた。だから、自信を持たせる、打者に気持ちを向かわせる言葉を投げかけた。
ストレートの四球を出したあと、津森は浅村に対し、2球連続で150キロを超える真っ直ぐを投げ込んで追い込んだ。最後の5球目も真っ直ぐ。声をかけてくれた今宮のところに打球は飛び、そして窮地を脱したのだった。
試合後に「こういうのは減らしたいです、無駄な四球は。今日が再スタートみたいな感じだったので、明後日また切り替えてやっていきたいです」と反省の言葉を並べた津森。試合には敗れたものの、グラウンド上ではこんなやり取りが繰り広げられていた。この一敗を無駄にしないため、その瞬間瞬間で選手たちは全力を尽くしている。