鷹フルがお届けする主力4選手による月イチ連載、板東湧梧投手の「6月前編」です。今回のテーマは「先発」。開幕ローテーションから漏れた中、斉藤和巳投手コーチと“ある約束”を交わしたそう。その内容について明かします。板東投手の月イチ連載「6月後編」は7月1日(土)に公開予定です。
板東は25日のオリックス戦(PayPayドーム)で今季2度目の先発登板を果たした。結果は4回1/3を投げて3失点で今季初黒星。球団を通じてのコメントでも「ランナーを出してからリズムの悪い投球になってしまった。点の取られ方としては最悪だったと思います」と反省するしかなかった。
昨オフから先発への意欲を口にして、何度も開幕ローテ入りが目標だと公言してきた。結果的にはそこから漏れ、ブルペンからチームを支えてきた。15日のヤクルト戦(神宮)で今季初先発し4回3失点。「先制点を与えてしまって、ああいう投球をしたら負けるんだという投球だった」と振り返る。
初先発に至る前、斉藤和巳投手コーチが明かしていた。「頭の片隅からずっと(板東の先発は)離していない。それは(板東とも)約束しているんで。先発させたいんで、板東を」。約束という言葉を使って、板東の先発構想を明かしていた。一体、どんな言葉でチャンスをもらったのか。板東本人がその瞬間について振り返る。
「先発を勝ち取れなかった時に、まず言われて。開幕の直前くらいに、ですね。あとは、シーズンが始まって、僕が広島で中ロングする前にもまた『お前の先発プランは考えているから』って言ってもらって。そしたらポンポンって、先発させてもらうことになりました」
6月2日の広島戦(マツダスタジアム)で、板東は2回から2番手として登板。3回無失点に抑えて、今季2勝目を挙げた。その時点では斉藤和コーチの中で先発プランがあったといい、板東も「その話をしてもらったのは覚えています」と心に深く刻まれている。「(先発が)あると言われても、結局いいピッチングをしないと、ないと思っていた」と“欲”は出さず、目の前の投球に集中していたことも、板東らしかった。
「あまり気にしてはいなかったですけど、広島戦の前に言われた時は『いよいよあるんだな』って、またスイッチが入りました。自分でもイメージできたので、そのプランが。その時は改めて、先発のイメージが濃くなって気持ちは変わりました」
選手の起用は首脳陣が決めること。板東自身も「『先発が一番』だとか『中継ぎをやりたくない』とかは本当にないので」と、まずは結果を出して自分のポジションを掴んでいかないといけないことは誰よりもわかっている。その上で「プロに入った時は、長いイニングを投げてトータルでチームに貢献するイメージを持っていました」と先発で活躍する道筋を、自分なりに描いていた。
小学校から始めた投手というポジション。「小学校の時は2番手、3番手とかでした」と振り返り、中学校からエース格になっていった。「やっぱり、投手が点を取られなければ負けることはない。責任感のあるところを投げるのは楽しいというか、いい意味でも悪い意味でも勝敗を左右するので」。少しずつ覚えた投手、先発として試合を作る楽しさ。プロの世界でようやく、ローテを争うところまでたどり着いた。
25日のオリックス戦では結果を出せなかったが、斎藤学投手コーチは「次に期待したい」ともう一度チャンスを与えることを明かしていた。今度こそ結果で首脳陣に、何よりも斉藤和コーチからの期待に応えたい。