激戦に終止符打つ決勝打も「チームに迷惑を」 今宮健太が真っ先に反省した理由

ヤクルト戦に出場したソフトバンク・今宮健太【矢口亨】
ヤクルト戦に出場したソフトバンク・今宮健太【矢口亨】

「あのミスがなければこういう展開になっていなかったかも」

■ソフトバンク 9ー7 ヤクルト(15日・神宮)

 激戦を制した白星の立役者に笑顔はなかった。15日に敵地・神宮球場で行われたヤクルト戦。延長10回に値千金の勝ち越し適時打を放った今宮健太内野手。試合後、報道陣の前に姿を見せると、開口一番に「チームに結構迷惑をかけてるんで、しっかりとそこは反省して、また明日からやりたいと思います」と謝罪を口にした。

 4時間47分にも及ぶシーソーゲームだった。7-7の同点のまま、試合は延長戦へ。延長10回、先頭の上林誠知外野手が右前安打で出塁。甲斐拓也がバントを決めて走者を進めると、代打・野村大樹内野手が左前安打、中村晃外野手が四球で繋ぎ、1死満塁で今宮に打席が巡ってきた。

 初球は空振り、2球目はボールとなり、3球目の見逃しで1ボール2ストライクと追い込まれた。4球目、清水昇投手の投じた高めの151キロの真っ直ぐを、必死にバットに当ててカット。ボールに食らいついた。迎えた5球目。真ん中低めへのフォークに体勢は崩されたが、泳ぎながらもバットでボールを拾うと、打球は三塁手の頭上を越えて左翼線へと落ちた。2人の走者が生還し、2点の勝ち越しに成功。二塁上で今宮はベンチに向けて右手を掲げた。

「それ(決勝打)よりもミスですね。あのミスがなければ、もしかしてこういう展開になっていなかったかもしれないですし、チームに結構迷惑かけてるんで、しっかりとそこは反省してまた明日からやりたいと思います。その前もチャンスで回ってきましたし、そこで何とか取り返せるようにと思っていた」

 自分自身が許せなかった。5回に3点を奪って逆転した直後の守備だった。この回からマウンドに上がったジョー・ガンケル投手が先頭の濱田に左前安打を浴びた。続く山田の打球は力無い投ゴロになった。打球を処理したガンケルは余裕を持って二塁へ送球。ここでまさかのミスが起きた。

「欲張ってゲッツーを欲しがってしまったがために、ああいったミスに繋がってしまった」。ベースカバーに入るのがわずかながら遅れた。併殺を狙う焦りがあったのか、名手・今宮のグラブからボールがこぼれた。エラーで走者はオールセーフとなってしまった。

 ここから右腕は満塁のピンチを招くと、サンタナに犠飛、オスナに左前へ2点適時打を浴びて瞬く間に3失点。再び逆転を許し、追う展開になった。タラレバではあるが、そこで1つでもアウトにしていれば、サンタナの中飛で無失点のままイニングが終わっていた。試合展開を大きく左右するエラーになってしまった。

 投手に、チームに迷惑をかけたからこそ、なんとしても挽回したかった。同点に追いついて迎えた6回2死一、二塁では四球を選んでチャンスを広げた。9回先頭で迎えた打席は遊ゴロに倒れたものの、延長で勝負を決する一打を放った。「取り返せるチャンスが2回も来て、そこで結果が出てよかったなと、まずはホッとしています」。チームが勝ったことに安堵した。

「点を取られて取り返して、またミスでやられて、また取り返してくれてっていうところで、負けゲームかと思うところだったんですけど、チーム一丸となって勝ててよかったなと思います。1人1人が自分の役割を全うしてやったゲームだったと思うんで、明日はまた移動ゲームでしんどいところがありますけど、交流戦残り3試合ってところで区切りがつくんで、頑張っていきたいなと思います」

 勝負を決する一打よりも、チームに迷惑をかけたプレーをまず悔やむ。チームを背負うリーダーとしての自覚が滲む。幾度となく好守で救ってきた今宮が、必死に打った決勝打だった。

(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)