高卒2年目で先発に挑戦中「どういう風に1週間過ごせばいいのか」
育成2年目の井崎燦志郎投手が大器の片鱗を見せている。県内トップクラスの進学校として知られる福岡高から2021年育成ドラフト3巡目で入団し、今季が2年目の右腕。6月3日に行われた四国IL高知との4軍戦で、プロ入り後最長となる5回を投げて3安打2失点とまずまずの投球を見せた。
4月30日に行われた九州アジアリーグ宮崎との4軍戦で1回を無安打無失点。リハビリ組からの復帰戦で、自己最速となる152キロをマークした。5月27日の同リーグ北九州戦では初めて先発して3回2/3を1安打1失点。登板のたびにイニング数を徐々に伸ばし、先発として段階を踏んでいる。
「投げる日が決まっているというのが初めてだったので、どういう風に1週間過ごせばいいのかわかりませんでした。どのタイミングで投げればいいかとか、中田(賢一4軍投手)コーチに聞きながら」。プロ初の先発では登板日までソワソワしながら過ごし、登板前日も「めちゃくちゃ緊張しました」と初々しく振り返る。
井崎が成長を遂げている要因はどこにあるのか。
技術的なところでいえば、昨秋から取り組んできたフォーム改善が大きい。昨季までは制球に苦しんできたが、自分に合ったフォームが身に付くと、ある程度狙ったところに投げられるようになった。それが自信になり、精神的にも余裕が生まれ、落ち着いてマウンドに立てるようになった。
「基本スリーボールまで持っていかないように。打たせて取るじゃないですけど、タッキー(瀧本将生投手)とかだったら三振を取るために球数を投げると思うんですけど、自分はまだ体力もないので、できるだけストライクを入れて打たせるように」と、どんどんゾーンで勝負を仕掛けていく。細かい制球力はこれからだからこそ、持ち前の直球で大胆に勝負しようとしている。
先発として現在投げている球種はストレートとスライダーだけで、フォークは練習中だ。それでも、主に独立リーグの選手たちを2球種だけである程度抑えている。初先発した北九州打線はミーティングでも「真っ直ぐに強い」と聞かされていたが、井崎の直球がまともに捉えられることはなく、その威力がうかがい知れる。井崎自身も「2軍、1軍になったら全然話は違うと思うけど、とりあえず真っ直ぐは自信を持って投げられています」と手応えを感じている。
「調子に乗るわけじゃないですが、打たれたとしても、今だったら運が悪かったな、と思えるような気持ちの持ち方ができています。今は野球が楽しいです。やっとバッターと戦っている、野球をやっているという感じで楽しいです」と語る表情は明るい。「ストライクが入らない」と悩んでいた昨季の姿とは見違える。目を輝かせながら目の前の野球と向き合う井崎の進化は、見ている者をワクワクさせてくれる。
(上杉あずさ / Azusa Uesugi)