迫る支配下登録期限「結果を残さないと厳しい」 チーム最小兵・西尾歩真の心中

ソフトバンク・西尾歩真【写真:藤浦一都】
ソフトバンク・西尾歩真【写真:藤浦一都】

「大卒なので、1年目から2軍で出続けて結果を残さないと」

 2023年の支配下登録期限が7月末に迫っている。「あとはもうアピールしまくります」と意気込むのは、育成ドラフト13巡目ルーキーの西尾歩真内野手だ。中京学院大からホークスに入団。育成ルーキーながら、オープン戦にも“飛び級参加”。筑後でスタートしたキャンプからトントン拍子に1軍の舞台を経験した。

「経験のため」の1軍参加だったが、他にも育成選手がいる中で抜てきされたのは期待値の高さの表れだった。自らも「持ってますね」という運も味方につけて上々のスタートを切った。だが、その後は右肩肉離れでリハビリ組に合流。短期間で、酸いも甘いも経験することになった。

 5月16日に2軍に復帰。7年ぶりにPayPayドームで2軍戦が開催され、経験を積むために参加した。リハビリ明けで、4軍や3軍戦を経ず、いきなりの2軍戦でプレー面に不安もあった。「出られると思っていなかった」と驚いたが、18日の試合では「2番・遊撃」でスタメン出場し、3打数2安打1打点と結果を残した。「意外とやれちゃいました」と照れ笑いした。

「オープン戦よりお客さんは少なかったですけど、緊張しました。ここでやりたいなってすごく思った。やっぱりドームは全然違う。もう本当に気持ちが強くなりました」と目を輝かせる。オープン戦での“1軍”を知っているのは貴重な財産だが、この日の経験も大きな原動力になった。

 3、4軍の試合を経ずに、いきなりの2軍戦は首脳陣の期待もあってこそ。西尾自身も「少しは評価してもらえているのかなってのは思うんで、もっと評価してもらえるように頑張ります。もう本当にありがたいことで、こんな最初から2軍で出させてもらえると思わなかったので、 1日1日大事にしています」と噛み締めながら日々を過ごしている。

 大学時代は東海地区大学野球連盟岐阜県リーグで、打率4割を3度もマーク。小柄ながら、抜群のミートセンスと選球眼で高い出塁率を誇ってきた。「自分の持ち味はやっぱりバッティングだと思うので、そこをまず自分の長所としてやっていきたいです。ホームランとかそういう打球は打てないけど、外野の間を抜くであったり、もうちょっと力つけて、二塁打とか三塁打を打てればなと思います」とパワーアップの必要性を感じている。スイングスピードの向上を目指しつつ、持ち味の俊敏な動きも生かすため、瞬発系のトレーニングにも力を入れている。

 守備面は、本多雄一2軍内野守備走塁コーチから熱血指導を受ける。「守れないと出られないんで、守備も頑張ります」と、自身の課題として守備にも向き合う。「プロの速い打球に詰まる癖があるんで」と、早くからの準備を身に付けるようにと練習しているという。

 ホークスには、育成出身で1軍で活躍する選手が多く在籍する。「本当にみんな育成でやってたのかなっていうくらい、すごい人ばっかり。自分はまだ全然そんなレベルに達してないので、気負い過ぎず、1試合1試合集中してやっていきたいです。ただ、もう大卒なので。1年目から2軍で出続けて結果を残さないと厳しいと思う」。7月31日までに残された時間は少ない。

「もう本当にアピール。ここから怪我なく、とりあえずそこを目指してアピールします」と、可能性ある限り支配下を狙う。公称167センチだが、大学時代は「168センチだったのに……」。プロ入り時のメディカルチェックで“1センチ減”が発覚して、チーム最小となった。ただ、それも自身の持ち味として「小さく目立ちます」と笑う。小さな身体で大きな存在感を放っていくつもりだ。

(上杉あずさ / Azusa Uesugi)