10日の巨人戦で2失点…「負けず嫌い」を自称する大津がベンチで悔し涙
自分も“経験者”だから、とっさに声をかけることができた。涙する後輩を、1人にしておけなかった。ソフトバンクのドラフト2位ルーキー大津亮介投手が10日に行われた巨人戦(PayPayドーム)で1回2失点。ベンチへ戻り涙を流していると、周東佑京内野手が隣に座り、声をかけてきた。大敗の中とはいえ、先輩としての優しさがハッキリと見えたシーンだった。
先発の石川柊太投手が3回2/3を投げて6失点。中継ぎをつぎ込む展開となり、大津は2点ビハインドの8回にマウンドに向かった。2安打と死球で2死満塁とされると、梶谷に右前適時打を許した。右翼の柳町達外野手からのバックホームが捕手の頭上を越える悪送球となる間に2人目の走者も生還した。
自分自身の性格を「めっちゃ負けず嫌い」と表現する大津。期待に応えられなかったことが、何よりも悔しかった。ベンチで斉藤和巳投手コーチと言葉を交わした後、帽子を深く被り、下を向く大津に真っ先に駆け寄ったのが周東だった。背中をポンポンと何度も叩きながら、言葉を送る。どんな声をかけられたのか。大津が明かす。
「『自分のせいで逆転されたとかじゃないし、俺も1年目の時はよく泣いたし。お前より俺の方が泣いたから、全然気にすることない』って言ってもらいました。本当にありがたいです」
周東といえば、印象深いのが2020年。9月12日の西武戦(PayPayドーム)で2失策。周東が大津の隣に座ったのと同じように、川島慶三内野手ら先輩から声をかけられ、目を赤くして涙した。周東自身も後に「なんで泣いたんだろうって思います。泣くまでいかなくていいだろみたいな」と振り返っていたが、悔し涙は自分も経験したこと。だから大津に寄り添うことができた。
今年4月9日の西武戦(平和リース)でも正木智也外野手が2打数無安打、左翼守備でも失策を犯して途中交代となり、ベンチで涙を流していた。その時も周東は「悔しいんじゃないですか。それはめちゃくちゃわかりますよ。使ってもらって結果を出せないのは自分に腹立たしいと思います」と正木の気持ちを誰よりも理解していた。大津に見せた優しさは、周東自身の成長そのものだ。
「1試合くらいダメな試合もあるし『これまで抑えている試合もあるから』と話しました。あんな感じだったから悔しかったんだと思いますよ。全員が全員、打たれようと思って打たれているわけじゃない。なんとかしようと思って、あの状況でもなんとかしようと思ってマウンドに立っていると思うので。相手がいることですから」。周東も大津の心中を慮った。
翌11日、大津は死球を当ててしまった大城のもとに足を運び、言葉を交わした。一夜明けたから、少しだけ冷静に振り返ることができる。柳町のバックホームのカバーに遅れてしまったことも「それはもうボールが打たれたことが悔しくて、頭が回っていなかったです。悔しいのが勝っちゃって、体が動かなかったです」と受け止めて反省する。
周東佑京も、今宮健太内野手も、涙を力に変えて1軍に居場所をつかんできた。まだまだ発展途上の選手たち。失敗も悔しさも受け入れて、前に進むしかない。
(竹村岳 / Gaku Takemura)