3安打4打点と大暴れだった甲斐拓也 昨季からのスタイルの変化が現れる“数字”

巨人戦でお立ち台に上がったソフトバンク・甲斐拓也【写真:荒川祐史】
巨人戦でお立ち台に上がったソフトバンク・甲斐拓也【写真:荒川祐史】

「去年は自分自身が守りに入っていたところもあったので、攻めるところは攻めたい」

■ソフトバンク 5ー1 巨人(9日・PayPayドーム)

 ソフトバンクは9日、本拠地PayPayドームでの巨人戦に5-1で勝利した。甲斐拓也捕手が2回に先制の4号3ランを放つなど、この日3打数3安打4打点の大暴れ。先発の和田毅投手は6回途中で降板となったものの、4安打1失点の好投で交流戦歴代トップタイとなる通算27勝目をマークした。

 大きな援護を送る一発だった。両チーム無得点で迎えた2回だ。右前安打の牧原大成内野手を二塁、四球の栗原陵矢外野手を一塁に置き、2死一、二塁で甲斐が打席に入った。1ボールからの2球目。巨人先発・横川のフォークを捉えた打球は左中間フェンスを超え、ホームランテラス席へと飛び込んだ。

「たまたま入ってくれました。『抜けろ』という思いで走っていました。二塁くらいまでどっちか分からない感じだった」。7日のDeNA戦以来、2試合ぶりの本塁打。交流戦では両リーグ通じて3位タイの3本目となる一発に。4回の第2打席で左前安打を放つと、8回の第4打席では詰まりながらも、貴重な追加点につながる左前適時打を放ち、3安打4打点だった。

 交流戦に入っての10試合で31打数11安打3本塁打8打点、打率.355と打撃の状態が上向いてきた。昨季は.180に沈んだ打率も.227まで上昇。4本塁打、21打点は柳田悠岐外野手、近藤健介外野手、栗原陵矢外野手の3人に次ぐチーム4位の数字となっている。苦しんだ昨季との違いについてこう語る。

「なかなか割り切れないところもあったと思う。そこは自分の中で割り切るところは割り切ろうと思いますし、結局は自分の打席でもある。その打席で割り切ってやるところはやっていこうと思うようにもなった」

 昨季との“変化”は打撃の内容にも現れている。セイバーメトリクスの指標などで分析を行う株式会社DELTAのデータを見ると、最も大きな違いを見せているのが打席数における四球の割合を示す「BB%」だ。キャリアでも最低の打率.180に終わった昨季は9.4%を記録していたが、それが今季は3.3%と大きく低下している。

 昨季、甲斐は自身の出塁率向上を目指し、四球のアップも狙った。出塁率は.275と、打率に対して1割近い上乗せがされていた一方で、しっかりとボールを見極めようとした結果、カウントが悪くなることも多分にあった。当然、どの打者でも追い込まれれば、打てる確率は大幅に低下してしまう。四球を増やすことは決して悪いことではないが、打率低迷の要因にもなった。

「去年を除いて、以前はそういう(積極的に打っていく)感覚というのがあった。去年は自分自身が守りに入っていたところもあったので、攻めるところは攻めたいと思っている。自分が今までやってきたことをやってみようと思った」

 早いカウントから積極的に打ちにいくスタイルは、打球方向にも現れる。昨季は右方向への打球が28.9%あったが、今季は19%にまで低下し、中堅から左翼方向への打球が81%に増えている。ボールをしっかり見極め、右方向に打ち返すという意識から今季は変わっていることが、この数字からも伺える。

「それは僕も感じているところで、そっち(引っ張り方向)に打球が打てるようになっているっていうのはいいことだと思う。もちろん右に打つことも大事だと思いますけど、打てる球を打てなくなってしまうっていうところがあるので」

 もちろん、すべての打席で同じアプローチをするわけではない。右方向に打つべきところや状況によって、そのスタンスは変えている。変えているのは自分の打撃の“軸”の部分。「今のものをしっかり続けていきながら、体で覚えていきたい」。このまま打撃が上向いていけば、ホークス打線はより強力になる。

(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)