快勝にも悔しさを露わにした大津亮介 斉藤和巳コーチが肩を抱き伝えた言葉

ソフトバンク・斉藤和巳1軍投手コーチ(左)と大津亮介【写真:荒川祐史】
ソフトバンク・斉藤和巳1軍投手コーチ(左)と大津亮介【写真:荒川祐史】

斉藤和コーチが寄せる信頼「大津に助けてもらった試合はいっぱいある」

 4-0で快勝した7日のDeNA戦後、喜び合うホークスナインの中で1人、悔しそうな表情を浮かべていた人物がいた。9回にマウンドに上がり、ピンチを招いてイニング途中で降板したルーキーの大津亮介投手だった。その横で、斉藤和巳1軍投手コーチは大津の肩を抱き、言葉をかけていた。

 7回までに4点のリードを奪ったホークスは8回から継投で逃げ切りを図った。先発の東浜巨投手が7回まで無失点。球数はまだ99球だったものの、前回登板で打球の当たった脚に違和感が出たこともあって、リリーフを仰いだ。2番手の甲斐野央投手が2安打を浴びながらも8回を無失点に抑えると、9回にマウンドに上がったのが大津だった。

 だが、ドラ2右腕は先頭の牧に中前安打を浴び、1死から楠本に死球を与えた。1死一、二塁のピンチを招くと、藤本博史監督はモイネロの投入を決めた。大津にとっては走者を残して、イニング途中での降板となった。モイネロは簡単に2つのアウトを奪って逃げ切りに成功。ハイタッチで勝利を喜ぶ列の中で、大津は肩を落としていた。

 それに気付き、肩を抱いたのが斉藤和コーチだった。その時を撮影した写真はSNS上でも大きな反響を呼び、大津を励ます声も多く寄せられていた。この時、斉藤和コーチは何を思っていたのか。そして、大津にかけた言葉はどんなものだったのか。単独取材で話を聞いた。

「ショックというか、反省していたから。別にこんなことは、1年を通したら普通にあること。『反省は今日までにしてくれ』って。『明日からまた頼りにしているんやから、切り替えてくれ』って伝えた。気にするなっていうとアレやけど、こんなことでめげていたらアカンぞ、と」

「ああいう降板の仕方は誰もが悔しいと思うところ。本当は大津もモイネロも投げさせたくなかったんだけど、そうなってしまったから申し訳ないなっていうのもあった。大津に助けてもらった試合はいっぱいあるし、大津がしんどいところで常に待機してくれているから。新人なのにね」

 リリーフとは過酷な役割だ。試合があれば、毎日試合に備えて準備し、プレッシャーがかかる場面で試合に入っていかなければならない。ましてや大津はプロ1年目。気持ちの強い選手ではあるものの、全てが初めての経験だけに、かかる負担は相当なもののはず。それでいて、ここまで21試合に登板し、9つのホールドを記録。状況を問わない登板でチームを救っている。

 斉藤和コーチは自身の個人的な目標として「大津を今年1年、怪我なく最後まで1軍にいさせる」と掲げる。リリーフを続けていれば、抑えることもあれば、打たれることもある。投げる試合全てを抑えられる投手なんて存在しないことを理解しているし、大津にも分かっていてもらいたかった。

「1年目だからいろいろ思うところはあるだろうけど、これは全て経験だから。プラスのことだと思ってもらわないといけないし、こちらもプラスにしてやらないと。藤井(の先発)と一緒で1年目なわけだから、全部プラス。経験をプラスに変えてやるために、今日から、またアイツに頑張ってもらわなアカンし、俺も考えないとアカン」

 選手に寄り添い、気持ちを汲む斉藤和コーチ。「(大津に対しての評価は)なにも変わらない。アレで変えられたら困る」。ルーキー右腕に寄せる信頼は何も変わらない。悔しい降板を経ても、信頼を持ってマウンドに送り出す。

(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)