近藤健介が感じる打撃の“変化” 「この先は大丈夫」長谷川勇也コーチも実感する復調

先制タイムリーを放ったソフトバンク・近藤健介【写真:荒川祐史】
先制タイムリーを放ったソフトバンク・近藤健介【写真:荒川祐史】

不振の原因は「ポイントが近くなって、慌てて振ってるっていう感覚はあった」

■ソフトバンク 4ー0 DeNA(7日・PayPayドーム)

 ソフトバンクは7日、本拠地・PayPayドームで行われたDeNA戦に4-0で快勝した。近藤健介外野手が3回1死二塁で左中間へ先制の適時二塁打を放つなど、5月30日の中日戦以来となる3安打猛打賞。試合後は「今日に関してはやっぱ振ったボールが前に飛んでいたんで、そこは良かったんじゃないかなと思います」と振り返った。

 初回1死一塁の第1打席は左前安打でチャンスを広げ、3回の第2打席では先制打。6回の第3打席でも追加点の起点となる左前安打を放った。7回の守備でベンチへ退いたが、今季2度目の3安打だった。

 今季、日本ハムからFAでホークスへと加入した。打線の核として期待されてきたが、この試合が始まる前まで50試合で打率.254。通算打率が3割を超える近藤にとって物足りない数字だったのは間違いない。球界を代表するアベレージヒッターに何が起こっていたのか。試合後、近藤自身はこう語った。

「もちろんバッティングは一番タイミングが大事。どうしても調子が悪いと、打席の中でも自分の振り方だったりに囚われる。そうすると、どうしてもピッチャーとのタイミングを取るのが遅くなってしまう。ボールをどうしても見よう、見ようとしすぎてる部分があった。差し込まれるというか、ポイントが近くなって、慌てて振ってるっていう感覚はあったんで、そこかなと思います」

 なかなか自分の中でいい感覚が出なかった前半戦。自身の打撃フォームなどに意識がいくあまり、タイミングが立ち遅れていた。ボールを見ようとしてポイントが近くなり、スイングを仕掛けても、ファウルや空振りになることが多くなっていた。交流戦に入った頃から、そこに変化が出てきた。

「一番は打ち損じが減ってきた。(バットを振ってファウル、空振りじゃなくて前に飛んでるというのは、ヒット、凡打に関係なく一番いいのかなと思います」。まだまだ本調子とはいかないものの、打球を捉える確率が上がってきたと近藤本人は感じている。それがヒットだろうが、凡打だろうが、ファウルや空振りといった打ち損じが減ってきたのが明るい兆しだった。

「ここから先はたぶん大丈夫ですよ」と語ったのは長谷川勇也打撃コーチだ。近藤が“師匠”と仰ぎ、ホークス入団の後押しともなった長谷川コーチはどこに復調の気配を感じ取ったのだろうか。

「スイングに柔軟性が出てきたという感じ。点で打っていたところが、少し“幅”が出てきた。どうしても強くインパクトしたい、力強い打球を打ちたいと思って、おそらく今シーズン入ってきたと思う。どうしてもインパクトを強く求めるがあまり、点になっていた部分が、少しずつちょっとほぐれて、幅ができてきた」

「前で泳げるバッターだったんですけど、それがなくなっていたっていうところは多分彼なりに気持ち悪さを感じていたとは思います。どうしても打つところが点しかないから、前に出たらミスになる。だから余計ボールを見てしっかり捉えようとして、点になっていた。ズレてからの前での応用というところが彼の持ち味なんですけど、ズレてもヒットっていうのがなかったから、そこは気持ち悪さだったと思います」

 長谷川コーチが指摘するのはインパクトゾーンの“幅”。これまでは点になっていたものに幅が生まれ、少しタイミングがズレても、打ち損じなくなってきたという。近藤の3安打は5月30日以来、今季2度目。6月に入っての6試合で22打数9安打、打率.409と本来の姿が戻ってきている。

 3番を打つ近藤の復調と共に、チーム状況も上向いてきた。中日に負け越した交流戦も広島、DeNAと2カード連続で勝ち越しを決めた。頼もしき好打者に本領発揮の気配が漂ってきた。

(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)