再登録から4試合連続ゼロ封 登録抹消の10日間で松本裕樹に起きた思考の“変化”

ソフトバンク・松本裕樹【写真:竹村岳】
ソフトバンク・松本裕樹【写真:竹村岳】

再び得た手応え「自分の本来の投球だったりを再確認できて投げられました」

 思考から入れ替えたことが、好投につながっている。ソフトバンクは1日の中日戦(PayPayドーム)に5-6で競り負けた。この試合で、先発のジョー・ガンケル投手がつかまり逆転された直後、5回1死二、三塁でマウンドに上がったのが松本裕樹投手だった。ガンケルが残したピンチを抑えて“火消し”に成功。5月23日に再登録されて以降、4試合連続無失点だ。

 先発のガンケルは5回までに2失点。5回1死満塁で細川に右翼線へ2点二塁打を浴びたところで、松本裕がバトンを受け取った。「しっかりと集中して、いいボールを投げて打ち取ることだけを考えていました」。4番の石川を150キロの直球で空振り三振。ビシエドは133キロのスライダーで打ち取り8球で任務を完了。厳しい場面でも「打者との勝負を第一に、打ち取っていくことしか考えないように」と見事な集中力だった。

 5月13日に登録抹消となり、23日に再登録された。「正直、抹消中に答えは出なかった」と、まだ手探りではあるようだが「色々話していく中で、自分の本来の投球だったりを再確認できて投げられました。(抹消中に)考える時間ができたので、見つめ直して。何が悪いピッチングにつながったのかっていうところ」と話す。短い期間ではあった中で、得た手応えはどんなものだったのか。

「抹消される前は力みっていう部分が大きくて。精度っていうよりは勢いだったり、力に頼っている部分が大きかった。今は精度をまず大事にして、そこから噛み合ってくれば球威が出ていくような。順番の違いですかね。今日のところは精度を大事にして、この何試合かやってきたことをそのままやって、腕を振っていくことができました」

 昨季は156キロを計測するなど、力強い直球が武器でもある中で、今は精度を求めてマウンドに立っている。「(抹消前は)ずっとしっくりきていない部分があったので、試行錯誤していった結果、これかなってところでやっている感じ」と内容にもしっかりと納得しているようだ。イニングの途中から登板するケースも目立つが「僕自身、セットポジションが苦手なわけでもない。気にしないですね。自分のボールはどっちでも投げられるので」とどこまでも心強い。

 この日の最速は152キロで「抹消前の方がスピードの数字自体は出ていたので、精度や質ですかね。力み方が変わったので、打者の見え方が少しでも変わっていれば」とうなずく。斎藤学投手コーチも抹消の前後で比較しても「だいぶいい時の感じに戻ってきた。スピードというよりも、キレですね。今日の球を見ても、空振りするようになってきている」と手応えを感じている。

 ロベルト・オスナ投手が「特例2023」で抹消されている今、リリーフ陣としても乗り越えないといけない時期。松本裕にとっては、ここからはまた信頼を積み重ねていく作業だ。「抑えていけば自然とそうなっていくので、いいピッチングを続けて、1年間あるので。しっかりと戦い抜ければと思います」。変わらない表情が、また頼もしい。

(竹村岳 / Gaku Takemura)