一体、どんな関係があるのだろう? その光景を見たファンなら、きっとそう思うだろう。5月31日にPayPayドームで行われた中日戦。ソフトバンクの野村大樹内野手が試合前に談笑していたのは、なんと中日のダヤン・ビシエド内野手だった。5分ほどの会話の中で野村大は頭を下げて、最後にはガッチリ握手まで交わしていた。「めっちゃいい人でした」と目を輝かせる野村大が、意外な関係を明かしてくれた。
ビシエドはキューバ出身で、2016年から中日に在籍する右投げ右打ちのスラッガーだ。NPB通算946安打、133本塁打。2018年には打率.348で首位打者、178安打で最多安打のタイトルを獲得した。リーグも違う外国人選手ではあるが、同じ右投げ右打ちの野村大も「大先輩ですよ」とリスペクトする存在。スマートフォン用の野球ゲームで実際にビシエドを使用しているという。
2人の仲をつなげたのは、チームメートのリバン・モイネロ投手だった。「モイネロが僕のことを『タンキー』って呼ぶんです。豆タンクみたいな。元々ビシエド(の愛称)が『エル・タンケ』じゃないですか。だからモイネロが僕に似ているっていうのは言っていたんです」。この日が直接会うのは初めてだったが、実はその前に“伏線”があった。
「去年PayPayドームでモイネロがビシエドとビデオ通話をしていた時に、大きい声で『タンキー!』って呼ばれて、僕も話したことがあったんです。『ホークスのタンキーはコイツや』って紹介してくれて」
この日、野村大は試合前の練習メニューを消化し、1度ベンチに戻った後、中日ベンチに向かってビシエドに挨拶した。その隣には、もちろんモイネロもいた。会話の内容に「『こいつがタンキー』って言われて。ビシエドにも『ウエートどれくらいするの?』って聞かれて『毎日してる』って言ったら『俺も俺も』って言ってました」と笑顔で明かした。
会話はスペイン語だったが「モイネロとも話すので、スペイン語はカタコトですけどちょっとだけ話せます。野球用語がわかるくらい」と言う。ビシエドの打者としての凄さにも「ハードヒッターというか、打球が速いですよね。振る力がすごいので、僕もあれくらいつけば“本家”に負けないくらいになれると思います」と追いかける背中の1つでもある。
モイネロとは意外にも? 「めっちゃ仲良いですよ」と明かす野村大。タンキーの愛称は「モイネロしか言っていないです。モイネロはずっとそれで呼んできますけど……」とチーム内では浸透はしていない。「モイネロは何か探して、僕の呼び方を変えてくるんです。前は何か、キューバのキャラクターの名前で。調べても出てこないし、でも、それでデスパイネはめっちゃ笑っていました」とエピソードも披露した。
野村大は「僕めっちゃ外国人選手に好かれます」という。ウイリアンス・アストゥディーヨ内野手に、昨季まで在籍したアルフレド・デスパイネ外野手、ジュリスベル・グラシアル内野手、ダリエル・アルバレス外野手らだ。「会うたびに絡んできます。スペイン語なので何かわからないですけど、何かいじられている気はしています」と苦笑いだ。
「デスパイネにはずっと『おい、チビ』って言われていましたし、グラシアルからは『お前は“0.4グラシアル”や』って言われました。『1になったら本物になれる』って(笑)」
外国人選手に愛される野村大のキャラクターが、ついに球団の外にまで飛び出し始めた。ファンやチームメートから「愛される」ということも大きな才能の1つだ。