勝利にはつながらなかったが、投手陣は確実に変わろうとしている。ソフトバンクは28日、ロッテ戦(PayPayドーム)に5-9で敗れた。先発の藤井皓哉投手が5回3失点。1点を追う展開で終盤を迎えたが、リリーフとして登板した津森宥紀投手、泉圭輔投手がそれぞれ3失点。交流戦前のロッテとの2試合で、投手陣は実に22四死球を与えてしまった。
相手先発は佐々木朗。ロースコアの投手戦に持ち込みたい中で試合は始まった。初回に2点、2回にも1点を失い先行されたものの4回に2点を返し、1点差として終盤戦に突入した。7回、ベンチがマウンドに送ったのは津森。チームトップの22試合目の登板だった。藤岡に四球、中村奨に死球を与えてしまったところで、斉藤和巳投手コーチがマウンドに向かった。伝えたのはシンプルな言葉だった。
試合前の時点で、ソフトバンクのチーム防御率2.99はリーグ3位。113与四球は同2番目という少なさだ。斉藤和コーチが就任して以降、伝え続けてきたゾーンで勝負する勇気も、この展開で送り出すベンチからの信頼も、ここで思い出してほしかった。結果、ポランコに3ランを浴びた。「ビハインドの中で登板させたのは終盤の流れをつかみたかったから」。斉藤和コーチは津森を一切責めなかった。
「(津森の)投げているペースを見て、どれだけチームに貢献してくれたか。この言い方をいつもすると周りがどう思うのかわからないけど『責めるとかわいそうちゃうかな』とは思う。これが続けば、あれやけど」
津森も試合前の時点で防御率1.86の安定感を誇っていた。「(かけられた言葉は)『思い切っていけ』みたいな感じでした。明後日あるので、また頑張ります」と前を向く。斉藤和コーチも「怖がって投げているやつばかりではない。その再確認として、シンプルな言葉をかけ続けているだけ」。ゾーンで勝負する意識がこの日は勝利につながらなかっただけ。長いシーズンの中で、1試合の結果だけで評価をすることは絶対にない。
斉藤和コーチは2試合で22四死球を与えたことに「この2試合だけで周りの人から見られるのは仕方ない。結果が全てだから」と投手コーチとして責任を受け止めつつ、「この2試合で色々判断をされても困る」とも語る。「1軍の選手に技術指導することはほぼない。考え方とか、気持ちの持ち方の話はずっとしているつもり」。今の投手陣は変わろうとしている途中なのだ。
5番手の泉も4四死球と崩れ、登録抹消が決まった。斉藤和コーチも降板後にベンチで言葉を交わしたが「そんな多くは話していない。あんまり言葉が出てこない状態だったから」と内容を明かす。「結果も含めて、もう一回やり直した方が、彼のためじゃないかという判断」と、2軍に送る理由を説明した。
斉藤和コーチを取材していた中で、その後ろを津森が通った。「また休み明けな。いっぱいメシ食えよ」。声をかけられた津森も、斉藤和コーチの目を見てしっかりとうなずいた。投手陣の力で白星をつかむ試合がくるまで、この悔しさは絶対に忘れない。