斉藤和巳コーチに言わせてしまった「だからこの数年…」 武田翔太が胸中を激白

ソフトバンク・武田翔太(右)と斉藤和巳コーチ【写真:藤浦一都】
ソフトバンク・武田翔太(右)と斉藤和巳コーチ【写真:藤浦一都】

5月3日のオリックス戦で2回11安打6失点…今の武田翔太は何を思うのか

 あの日の悔しさは今も胸に残っている。「だからこの数年こんな感じなんやろ」とまで言わせてしまった。誰も言ってくれなかったストレートすぎる苦言を、どう受け止めたのか。ソフトバンクの武田翔太投手は今季1軍で2試合に登板し、ともに5回持たず降板。5月4日に2軍降格となった。

 今季2度目の先発となった5月3日のオリックス戦(PayPayドーム)だった。初回から満塁のピンチを招いた。なんとか無失点に切り抜けたが、2回は耐えられずに一気に6失点を喫した。2回で11安打を浴びて2敗目となり、翌日に登録抹消。以降はファームに合流して、もう一度自分自身と向き合っている。

 内容以上に、姿勢そのものを厳しく指摘したのが斉藤和巳投手コーチだった。2016年に14勝を挙げて以来、2桁勝利から遠ざかっている武田。斉藤和コーチにとっても右腕がもがき続けている要因を感じざるを得ない内容だった。オリックス戦のKO直後、ベンチで言葉を交わす姿が映し出されていた。試合後、単独取材に対してこう話した。

「『置かれている立場を考えろ』って。ここであかんかったら、もうあかんねんっていう状況やんか。あいつは『勝負にいった』っていうけど、それが心からの本心なのであれば、ただ技術がないってことやん。ということは、この世界で生き残りたいなら技術を上げろ、と(伝えた)。それは本心でない、自分の中で偽りがあるのであれば、同じことを繰り返す。だからこの数年、こんな感じなんやろ」

「初回を見て、ゼロに抑えて、それだけで俺は満足できない姿やった。『もっと勝負しろ』『かわそうとするな』って。プライドなんかわからんけど、結局その後にババッと取られて。ヨーイドンで戦う姿勢じゃないとさ、みんなにも失礼やし、こうやって試合を壊しているわけやから」

 登録抹消となった4日も2人はPayPayドームの左翼フェンスの前で10分ほど話し込んだ。ファーム降格から少し時間が経ち、今度は武田に話を聞いた。

「1軍で投げる時に『もっと強い気持ちを持って投げろ』と。周りだって見ているし、結果うんぬんよりかは、もっとガッと気持ちというか“覇気”を出していけって言われました」

 数年に渡って燻り続けていることは誰よりも本人がわかっている。ストレートな言葉をもらい「そういう見え方をしているということは受け止めないといけない」と矛先を自分に向ける。会話の雰囲気も「“もういいわ”っていう感じは本当に一切なかったです。『頑張れ』っていうのは、ものすごく伝わってきました」という。あんなにもハッキリと言葉にしてくれたことが、武田への期待そのものだ。

「どうでもよかったら言わないと思う。何を言ったかも大事ですけど、そういう行動をしてくれたことをしっかりと感じて、受け止めないといけない。期待にも応えないといけないです」

 自分らしさも忘れていない。「現実主義者」と自称するように「気持ちと技術が必要なのは間違いない」。斉藤和コーチからの意見、視点とともに技術面からのアプローチも探っているところだ。「最終的な目的は打者を抑えること。抑えるために何かが必要なわけで、そこをどうやっていこうかっていうところ。いい形を見つけていくための“進んで行き方”が大事」と言い聞かせる。課題の克服と、再度の1軍昇格を目指す。

 結果はもちろん、ここまでハッキリと言わせてしまったことが悔しくて仕方なかった。今月20日のウエスタン・リーグの広島戦(タマスタ筑後)では5回1/3を投げて7失点。言い聞かせるように口にしていた「やるしかない、やるしかないので」。何度だって言う。武田翔太は、今ここで変わるしかない。

登録抹消になった4日、練習中に話し込む武田翔太と斉藤和巳コーチ

(竹村岳 / Gaku Takemura)