フルスイングから「チョップ打法」へ――。イメージの転換で覚醒を誓うのは、ソフトバンクの3年目・笹川吉康外野手。パワフルなフルスイングとその飛距離からは”ギータ2世”と期待される若きスラッガーだが、今季はここまで結果という点では物足りさが目立つ。
ウエスタン・リーグでは18試合に出場し、打率205、本塁打は0。2軍で得られるチャンスも決して多くはないが、3軍戦でも打率227、1本塁打と結果を残せていない。小久保裕紀2軍監督は「ロマン砲って言われながら、3軍でナンボ打ってきたんよって言ったら、ホームラン0って。だから、ちょっと変わっていった方がいいんじゃないかって話をしてるんです。本人じゃなく、我々の部分でもね」と頭を悩ませている。
春季キャンプから、小久保2軍監督と共に今年の目標を「打率3割」に定めて取り組んできた。しかし、打率はなかなか上がらない。かと言って、持ち前のパワーで本塁打を量産しているわけでもない。小久保2軍監督は「根本的にフォームをもうちょっと小さくした方がいいんじゃないかなというふうなところに来てるかなと思います。だって、彼は凡退の内容があんまり去年から変わってないんで。我々の責任でもありますね」とも語っていた。
苦しむ笹川は課題を見付けて取り組んでいた。その取り組みとは「大根切りです。それは言いすぎですが、上から叩くというか、チョップです。左手チョップです」。“チョップ打法”とはどんなものなのか?。
これまでは構えてからインパクトまでの軌道でバットが遠回りしていたという笹川のフォーム。左肩を下げたところから、フライボール革命に沿ったようなスイングをしてきたため、バットが遠回りしながらボールの下を振っていた。
「タイミングが合っていても遠回りしてる分、バットが遅れるんです。このままだとダメだと思って、それを自分から監督に言って相談しました」
小久保2軍監督が指摘しようと考えていたポイントもまさにそれだった。笹川が気付いたキッカケはオープン戦で1軍を経験した時だった。“初打席”の対戦相手は広島のニック・ターリー。「球が速かったんですよ。155キロぐらい。タイミング的には自分の中では捉えた感じだったんです。でも、実際は三振。何でだろうと思って、すぐ1軍のデータ室に行って見てもらったんです。やっぱりバットが遠回りしてて、間に合ってなかったんです」。
そこで考えたのが自称「左手チョップ打法」だった。左手でチョップするように、バットを最短距離でインパクトに持っていくイメージだ。「遠回りしてると、バットを早く出さなきゃいけない。ボールを長く見られなくて、変化球の見極めもできず、全部振っちゃうんです。バットを最短で出して、すぐ軌道に入れることができれば、遅れてもレフト方向に飛ぶし、ボールも長く見られるので、変化球にも対応しやすくなります」と説明する。
3軍で実際に試してみた。すぐに結果は出なかったが、感覚は「悪くはなかった」。2軍に戻って最初の試合となった5日の中日戦(タマスタ筑後)で2安打したのも「左手チョップ打法」の成果だった。ただ、上手くいかないこともまだまだ多い。根気強く、継続していく考えでいる。
ホームランへのこだわりを持って入団した笹川は「今、(ヒットもホームランも)どっちもあんまり打ってないんで、どっちでも嬉しいです」と、とにかく結果を求めている。まずは2軍で抜きんでた成績を収めることが目標。小久保2軍監督との約束「打率3割」を根気強く目指す1年にする。