言葉1つですら、チームの勝利に貢献しようとしている。ソフトバンクのフレディ・ガルビス内野手は、ここまで主に二塁手として14試合に出場している。出番が限られる中でも「いい仕事ができるような準備をしています」と前だけを見て日々を過ごしている。鷹フルではガルビスに単独取材し、今の胸中に迫った。
ホークスの開幕二塁は牧原大成内野手だった。しかし、4月27日の楽天戦(PayPayドーム)で左足を痛めて途中交代。翌28日に球団は左大腿二頭筋損傷と診断されたと発表した。以降は、ガルビスを含めて三森大貴内野手、川瀬晃内野手が二塁を争っている。ガルビスは打率.192ではあるが、代打でも2安打を放つなど、グラウンドに立てば集中力を見せて役割を全うしようとしている。
昨季は打率.171で38試合の出場に終わった。かつてバリバリのメジャーリーガーだったガルビスが不振の要因に挙げたのは変化球への対応。特にフォークに苦しんだといい、メジャーリーグではスライダーで攻められる場面でも、日本ではフォークを投げてくるという日米の違いに苦労した。
ただ、今季は昨季とは違う感覚がある。「去年に比べて、いい感じに見えています。去年ならスイングしている変化球を今年は我慢できている。状態はいいと思います」。一定の手応えを感じているからこそ、気になるのが、どんな胸中で日々を過ごしているのか、ということだ。
「準備をすることしかできない。しっかり準備をして、チャンスが回ってきた時にいい仕事ができるような準備をしています」
5月11日の日本ハム戦(PayPayドーム)では、試合前の練習の後、自身の打撃映像を10分ほど見つめた。吾郷伸之チーフアナリストとともに左右の映像を何度も見返して「もうちょっとコンパクトなスイングをすると、もっといい打球、強い打球が飛ぶ。スイングがコンパクトじゃない時は弱さがあって、そこを比べていました」と準備を怠らない。チームのための献身的な姿勢は、昨季と何も変わっていない。
貢献しようとするのはグラウンドの上だけではない。4月24日、チームは関東遠征から帰福する日だった。羽田空港でガルビスが時間をともにしたのは栗原陵矢外野手。スーツ姿の2人は1台のスマートフォンで、栗原の打撃映像に目を凝らした。「帰る前に空港で話をしていたんです。一緒に並んで、動画も見ながら」と栗原は振り返る。開幕以降の好調から下降線を描き始めた頃で、ガルビスの視点からは何を伝えたのか。
「あの時だけではなく、ほぼ毎日バッティングの話はしていますので。『ここ』というよりは、お互いにバッティングのトータルの話をしていました。(いい時と悪い時を比較して)ポイントとかもあるんですけど、お互いに話はしているところです」
ガルビスといえば、小久保裕紀2軍監督に「クソ真面目」と言わせるほどの人柄。今は出番こそ限られているものの、選手へのアドバイス1つでもチームの力になろうとしている。選手に助言をすることも「チームメートとして、アドバイスをしないといけないと思っている。サポートできるのであればやっていきたいと思っています」と当然のように話す。自分の存在の全てを、チームの勝利のために捧げている。
栗原は「去年のオープン戦から色々話はしてきましたよ」とガルビスの入団時からコミュニケーションを取ってきたことを明かす。ガルビスも「いい友達ができた。仲がいいですよ。野球のことも、野球以外のことも話したりします」とかわいい後輩だ。今は我慢の時間だとしても、ガルビスの姿勢と存在がチームに大きな影響を与えている。