マウンドでゲキを受け取った。期待するからこそ力強く、背中を押された。11日の日本ハム戦(PayPayドーム)で先発し、6回1失点の好投で3勝目を挙げた藤井皓哉投手。「粘りです。ここ2試合、ランナーを出してからの投球が課題だったので」と我慢強く投げられた背景には、斉藤和巳投手コーチの存在があった。
1回、先頭の矢澤に右翼線への二塁打を浴びる。1死三塁となり、谷内にはスクイズを決められて早々に先制を許した。3回も水野に二塁打、矢澤に四球を与えるなど、立ち上がりから試行錯誤が続いた。打線が3回に逆転してくれたが、4回も1死一、二塁のピンチを迎えた。ここで斉藤和コーチがベンチからマウンドへ。藤井は受け取った言葉の内容を明かす。
結果的に万波、江越と連続三振に切った。江越に対しては外角に152キロを決めて見逃し三振。ゾーンで勝負する勇気をもらい「しっかり、気持ちを入れ替えることができたので、助かったというか。そういう一言でした」と頭を下げた。「2試合先発として、チームに貢献できていなかった。期待に応えたいと思って、3人で終われてよかった」と登板全体を振り返った。
斉藤和コーチの視点では、どうだったのだろうか。立ち上がりから苦労し、迷いがあるのはしっかりと見ていた。「姿を見て、もっと自信を持って投げてほしかった。自信のないピッチャーにはマウンドに上がってほしくない」。シーズンを戦えば思うようにいかない日も当然ある。そんな時でも打者との勝負に集中してもらうために強い言葉で背中を押した。
具体的にかけた言葉も明かした。
「『しっかり勝負しろ』というか『調子が悪いなんて関係ない』っていう。『マウンドに上がっている以上は自信を持って投げろ』『ど真ん中で勝負してこい』って。前のイニングの時にもその話をしたから。自分を信じて、ボールは悪くないんやから。調子が悪いなら、悪いなりに真ん中で勝負してこい、って」
5回を終えた時点で89球。6回を9球で終えて、98球でリリーフ陣にバトンを託した。5回からの継投は選択肢にあったか問われ「こちらとしてはいかせたい思いがあったけど、逆に監督の方が『いかせろ』と。『同点まではいかせてやるから気合い入れていってこい』と。『7回もいかせろ』と言われたけど、そこはこっちが止めて。それくらい言ってもらえたのでありがたかったです」とベンチ内のやり取りを説明した。
昨季は中継ぎとして55試合に登板して、今季から本格的に先発に転向した。ペース配分や試合の流れを読みながら投球すること、マウンドでの全てが藤井の糧になっている。走者を出してからの投球は、自身も「先発としてやっていく以上、常に向き合っていかないといけない課題」と受け止めている。
5試合の先発登板を終えた。斉藤和コーチは藤井のペース配分について「何かコツをつかめたら。自分で強弱をつけるというか、波を作っていかないといけない。自分で波を作って、緩めるところは緩めるっていう。それは投げながら覚えていかないといけないところで、ある意味そこは経験が必要。あとは勇気も必要。覚悟も必要」と続けた。
斉藤和コーチ自身も何度もマウンドに立ち、覚えてきたこと。藤井も「まだまだ先発として足りないところがたくさんある。リズム良く投げることで攻撃のリズムも生まれると思うので、日々成長できるように」と今後を見据えていた。