ファームで2桁本塁打到達も… 育成4年目・石塚綜一郎に立ちはだかる“2軍の壁”

ソフトバンク・石塚綜一郎【写真:上杉あずさ】
ソフトバンク・石塚綜一郎【写真:上杉あずさ】

つかんだ不調の脱し方「自分のポイントを見つけられた」

 早くも“2桁本塁打”の大台に乗せた。育成4年目の石塚綜一郎捕手が3軍で存在感を示している。9日にタマスタ筑後で行われた沖データコンピュータ教育学院との3軍戦に「4番・三塁」でスタメン出場。無死満塁で迎えた第1打席で豪快な左越えグランドスラムを放ち、これが今季10本目の本塁打に。「自分でもびっくりです。こんなに打てるとは思っていなかったので。打つに越したことはないので、タイミングが合ってホームランになってくれたらいいなと思います」と話す。

 主に3、4軍で33試合に出場し、打率.336、10本塁打をマーク。「率も残さないといけない。去年は本塁打を8本打ったけど、率は残らなかった。今年は本塁打も打てて、率も残せるような感じでいけたら」。目の前の試合でしっかりと結果を積み上げている。

 昨季の8本塁打は1シーズンで放った数字。今季は5月上旬にして既に昨季を上回り2桁に乗せた。3月だけで7本打ったが、4月に入って調子を落とした。それでも「そこで早く調子を戻せたことが良かったと思います。悪くなった時は、ここを修正しないといけないという自分のポイントを見つけられたんです」。打撃の波はあるものだが、石塚は最初に訪れたこの不調をすぐに抜け出すことができた。

 そのポイントとは左足と左腕。「まず足が上がっていないと、タイミングが取れていない。それが一番ダメで、足でタイミングは取れているけど、上がおかしいとなったときは左肘。伸ばすイメージなんですけど、曲がっていると、タイミングが取れていても自分の思っている通りに打てない時があります。ゴルフ用語でいうとフェードを打つイメージです」と説明してくれた。

 修正ポイントを見つけ、それをすぐに実践出来るところも石塚の良さ。「人がやっていない時にやるのが一番だと思いますし、自分の悩んでいるところをモヤモヤしたまま帰るわけにはいかない」と全体練習後の自主練習にも高い意識で取り組んでいる。

 昨年12月には「4スタンス理論」と出会った。「人間はバランスの取り方と身体の動かし方で4つのタイプに分けられる」とする理論で、自分に合った身体の使い方をすることで能力を最大限に発揮できるとされる。この理論に基づくと、石塚がそれまでやってきたことは“真逆”だったという。

 それまでは軸足に体重を残して打っていたが、石塚の身体に合っていたのは「前に行きながら、移動しながら打つ」スタイル。「4スタンス理論」でいうところの「A1タイプ」で、前体重の内側重心でバランスを取るタイプだった。同タイプで代表的なのがイチロー氏(マリナーズ会長付き特別補佐兼インストラクター)だという。180度意識も変わるが、石塚はそれも「伸びしろ十分」と捉え、前向きに取り組んできた。

 育成4年目。危機感は強いが、春季キャンプはC組で迎えた。開幕してからも2軍昇格のハードルは高かった。3軍戦で結果を残しても、2軍には“1軍予備軍”があふれており、なかなかチャンスがない。焦りやモヤモヤする気持ちがあってもおかしくない。それでも、石塚は「2軍の枠がない、出るところが少ない、いつ呼ばれるかわからない状況で、呼ばれたときにパーンと打てるように常に準備はしていたいと思っています」と冷静に燃えていた。

 ポジション的な問題もある。捕手としては数試合に1回しか出場できないため、内外野の守備練習も積極的に取り組み、どんな形でも出場機会を増やす努力をしてきた。最近は、三塁手として出場することも多い。「うまいわけではないですし、守備で勝負していくタイプではないですけど……」としながらも、「あとはセカンドができたら強いんですけどね」と貪欲だ。

 5日からの中日3連戦では今季初めて2軍に昇格。初戦は育成枠の問題で出場できず、2、3戦目は雨天中止と運がなかった。ただ、打撃練習を見た村上隆行2軍打撃コーチからも「2軍でも打つのはそこそこやるはず」と期待されていた。週末からの敵地での阪神戦にも帯同予定。捕手としてではなく、故障者が相次ぐ内野の控えとしての昇格だが、チャンスはチャンス。ようやく得たこ貴重な機会で、思う存分力を発揮して欲しい。

(上杉あずさ / Azusa Uesugi)