清々しい表情からは自信が感じられる。今季2軍で主に“守護神”を務める尾形崇斗投手がアピールを続けている。ここまでウエスタン・リーグでトップタイの14試合に登板し、防御率は1.13。リーグ最多の6セーブを挙げている。
クローザーを任されていることを意気に感じている。「今年はずっと同じマインドでマウンドに上がるようにしていて、野球やっている以上、日本で一番いいピッチャーになりたいと思っています。その気持ちを持って楽しんでマウンドに上がる感じですね」。高いモチベーションが大きな原動力となり、好調の要因にもなっている。
「まだまだ課題とか足りないところがいっぱいある。もっともっとレベルアップしたい思いでいっぱいですね」。尾形の最大の武器は、何と言っても吹き上がるようなストレート。今季は最速154キロをマークしており、平均球速も150キロ超。安定して150キロを超えるようになり「まだまだ上がりそうだと投げていて感じています。去年も平均球速は上がったんですけど、今年はさらに2キロくらい上がっていて、ここ2年間では5、6キロ上がっている」と胸を張る。
「こうしておけばいいんだ、というのが見つかりました」という気付きとは何だったのか――。
尾形によると、腕の位置とバランスがポイントだった。練習中、様々な腕の角度、バランスを試しながら投げる中でしっくりくるものを見つけた。「去年からやっていたんですけど、これかなと気がついたのは3月後半から4月頭くらい。若干、腕を下げ気味にしました。腕が上がりすぎて、下半身の使い方と合っていないところがあった。腕を下げるイメージでいくと、腕は上がっているけど、ちょうど自分のバランスと合う」と説明する。
決してサイドスローのように肘を下げるわけではない。“意識”の中では下げるが、実際には上がったまま。投げた後は必ず映像でも確認し、微修正しながら感覚を養ってきた。
ストレートの威力だけなら1軍クラスの尾形にとって、課題は「決め球の精度」にある。高村祐2軍投手コーチは「2軍では抑える、1軍ではどうなの? と言うところが永遠の課題。決め球をいかに作ってあげるか。スライダーもだいぶ良くなってきているし、あともう1球種しっかりと出来れば、1軍でもどうにかできると思う」と現状を語る。直球は高く評価され、それは昨季も同様。尾形自身も課題を自覚し、アプローチしてきた。
最近、考え方も少し変えた。「真っ直ぐで押し込んじゃえば、それも決め球になるかなって。逆転の発想じゃないですけど。(課題は)フォーク、フォークと言われてきましたけど、だから何だと。それも必要ですけど、自分の良さは真っ直ぐで押して、押して、落とすこと。その方が早いんじゃないかと。150キロ台後半が低めにバシっと決まれば、いくら真っ直ぐと分かっていても打てないだろうと。そこをしっかり追求しつつ、フォークの課題もやっていく。強い気持ちですね」と語る。
「日本で一番いいピッチャーをしっかり目指す、その気持ちだけは忘れないように」。そんな信念に繋がったのは昨季の悔しい経験から。「上にいさせてもらったのに、自分のピッチングができなかった。そこを踏まえて、真逆をやってみようと。1軍で活躍したいとか、求めにいくのではなくて、自分をどれだけレベルアップさせられるか。それによってチームにいい影響、貢献できたらと思っています」。1軍での結果や課題ばかりに囚われるのではなく、常に成長することだけを考えるようになった。
自信に満ちた明るい口調からは好調さがうかがえる。「まだまだ上がる気がするんですよね。去年のちょっと悪いな、くらいの時が今この時なので。それでこれくらい発揮できているって考えたら、まだまだいくなというワクワクの方が大きい。いつでも行ける心と体はしっかり持っているので。そこが終わりじゃなくて、しっかりチームを勝たせられるとか、貢献できるとか、そういうところを思いながらやりたいですね」。大きく化けるかもしれないこの1年。尾形の底知れぬポテンシャルが花開く時を楽しみに待ちたい。