東浜巨が「色んなことを救ってくれた」 斉藤和巳コーチが感謝した117球熱投の価値

ソフトバンク・斉藤和巳投手コーチ【写真:藤浦一都】
ソフトバンク・斉藤和巳投手コーチ【写真:藤浦一都】

連日の延長戦でこの日使える中継ぎは3人だけ「使うつもりはなかった」

■ソフトバンク 6ー3 ロッテ(6日・ZOZOマリン)

 執念の力投が白星に結びついた。ソフトバンクは6日、敵地ZOZOマリンスタジアムで行われたロッテ戦に6-3で逆転勝ちした。先発の東浜巨投手が8回10安打3失点、117球で逆転劇を呼び込んだ。この右腕の熱投に「デカ過ぎるよ。1つの勝ちだけど、巨がいろんなことを救ってくれた。それは本人にも伝えたけど、投手陣としても大きな1勝だった」と感謝を口にしたのが、斉藤和巳1軍投手コーチだった。

 この日のZOZOマリンスタジアムは上空で15メートルを超える強風が吹き荒れていた。「過去イチで風を感じました」という東浜も投球動作中に風に煽られてバランスを崩す場面があるなど、苦しい投球となった。初回にいきなり井上に適時打を許して先制点を献上。4回には犠飛、1点差に迫った直後の6回には岡の適時打で1点ずつを奪われた。

 それでも粘った。3者凡退は2回と7回の2イニングだけ。2桁10安打を許し、毎回のように走者を背負いつつも、失点したイニングもなんとか最少失点で凌いだ。「単打はOKだと、長打だけは(避けよう)っていうところで、なんとか粘り強く投げていきたいと思っていた。先制されて、中押しされて、3点目取られて、取られ方は良くないので反省しないといけない」。試合後は反省が口を突いたものの、チームにとっては大きな働きとなった。

 というのも、この日は中継ぎ陣が試合前から“火の車”状態だった。4日のオリックス戦、そして5日のロッテ戦と2試合続けて延長を戦い、前日は延長12回引き分けだった。左腕の田浦文丸投手、嘉弥真新也投手の3連投を筆頭に、守護神のロベルト・オスナ投手や松本裕樹投手らも連投中。前日にマウンドに上がっていなかったのは高橋礼投手、古川侑利投手、リバン・モイネロ投手の3人だけだった。

 斉藤和コーチは試合後にこう明かした。「今日は(3人以外を)使うつもりはなかった、正直。巨に頑張ってもらわないと、という状況だった」。連投中の投手たちもベンチ入りはしていたものの、登板させるつもりは一切なかった。もし東浜が早い回で降板していたら大惨事……。そんな危機的状況で託されたマウンドだった。

 東浜自身は「あまりそこに捉われすぎても、と。結果的に長いイニングを投げられたらいいなという風に思考は変えていきながら、1イニング1イニングを積み重ねていくことを考えていました」と振り返る。結果的に積み重ねたイニング数は「8」。9回こそモイネロにバトンを預けたものの、リリーフ陣がほぼ使えない状況で、大き過ぎる投球となった。

「ずっとランナーを背負っていて、粘りのピッチングができるのはアイツの長所でもある。打線が逆転してくれて、巨に勝ちがついたのが1番嬉しいね」。斉藤和コーチが喜んだのは、踏ん張った東浜に白星がついたこと。ただの1勝ではない。苦しい状況を救うこの勝利は、1勝以上の価値がある。

(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)