復調の気配がしっかりと感じられていた。ソフトバンクの柳田悠岐外野手は6日、敵地ZOZOマリンスタジアムで行われたロッテ戦で2打席連発の逆転2ランを含む3安打3打点。頼もしすぎるほどにチームを勝利に導いた主砲の“覚醒”を「めちゃくちゃ感じていた」と予感していた人物がいる。その人とは、浜涯泰司“専属”打撃投手だ。
まずは2点を追いかける6回1死だった。メルセデスの142キロ直球をとらえ、バックスクリーンに飛び込む4号ソロで反撃ののろしをあげた。さらに8回無死一塁。澤村の直球を弾丸ライナーで、再びバックスクリーンに突き刺した。逆転2ランで今季初の1試合2発。風速20メートルを計測するほどの強風が吹き荒れた試合だったが、柳田の打球には関係なかった。
浜涯打撃投手は数年前から柳田の自主トレに同行している。「たまたま練習中に『浜涯さん、誰か一緒に自主トレいってるんすか?』って聞かれて。行っていないと言ったら『じゃあ来てくださいよ』って」と経緯を語る。試合前の打撃練習でも柳田に投げ続け、“専属”として一緒に快音を求めてきた。柳田から感じていた復調の気配について、こう語る。
「本人も考えてやっているから、どこがって言われたらわからないけど、確実に良くなっている。同じところに投げても打ち損じることがあったりするけど、今はそれが少ない。特に今年はそういう傾向かな。(復調の気配は)めちゃくちゃ感じていた。今は絶好調でしょう」
浜涯打撃投手はあくまで裏方であり、コーチではない。「『あ、いいね』っていう感覚的なものでしかないけどね」と具体的な改善点まではわからないというが、打球を通じて柳田のバロメーターは感じているつもりだ。「ギータは(良くない時は)ゴロになったり、ファウルにしたり、打球が上がらない。あとはドライブ(の打球)が増えるかな」と続けた。
「(柳田の調子がいい時は)打たれた感覚と、実際に飛んでいった球がマッチする。投げて、打たれて打球を見て『あ、いったかな』っていうのがフェンス直撃やったりとかする時は良くないし、ちょっと差し込んで詰まったかなって時にホームランになる時もある。そのギャップが少ない時がいい時かな」
防球ネット越しに打者・柳田と毎日向き合う。浜涯打撃投手なりに感じる調子の波は、実際の成績にもある程度比例しているといい「けっこう、ギータはつながるかな。特に今年はつながっている。今年の最初の頃と今でも、練習は全然違う」とはっきり言った。開幕以降は四球こそ選ぶものの、打率が上がらずに苦しんでいた。浜涯打撃投手も「やっぱり最初の方は良くなかったもん」と印象を話す。自分自身はもちろん、周囲まで手応えを感じている。
4日のオリックス戦の試合前も、柳田と言葉を交わした。3日の3号ソロについて「ギータの方から『昨日めっちゃバッティング練習よかったですよね?』っていう話から始まって。『左手で押し込むのをめっちゃ意識した。だからレフトにいいのが打てた』と言っていた。あの当たりは完璧だったね」と明かす。3日から4戦3発。柳田の中にしかない感覚が、はっきりと結果につながり始めている。
「やるでしょう。楽しみですよ」とにっこり笑った浜涯打撃投手。幕張で放った2発。きっと“専属の相棒”にとっては驚きはなかったはずだ。