後輩たちに「言いたいことある」 起死回生の同点弾…中村晃が苦境で示した“姿勢”

ソフトバンク・中村晃【写真:藤浦一都】
ソフトバンク・中村晃【写真:藤浦一都】

2点ビハインドの8回に同点2ラン「勝っていかないと(雰囲気は)良くはならない」

 チームを引っ張る中心にいるからこそ、言いたいこともある様子だった。ソフトバンクは4日、オリックス戦(PayPayドーム)で8-7でサヨナラ勝ち。延長11回無死一、二塁で栗原陵矢外野手が中越えの一打を放って試合を決めた。そこに辿り着く道のりで、殊勲の一打を放ったのが中村晃外野手。2点を追う8回1死二塁で同点2ランを放ち、試合を振り出しに戻した。

 6回に開幕から無失点投球を続けてきた松本裕樹投手が3点を失って逆転を許した。チームは連敗中。重苦しい雰囲気を一振りで振り払ったのが中村晃だった。山崎颯のフォークをとらえると、打球は放物線を描いて右翼席へ。「真っ直ぐと、フォークのピッチャーなので、タイミングだけしっかり合わせていけたらいいなと思っていました」と振り返る一打に、藤本博史監督も「一番大きい。あれで流れが変わった」と手を叩いて喜んだ。

 4月16日の楽天戦(楽天モバイルパーク)以来の2号2ラン。1号も逆転での2ランだっただけに、打席内はもちろん、試合の“ここぞ”の場面で集中力が光る。「あれ(1号)はできすぎですけどね。でも勝ちにつながる点になってよかったです」。グラウンドではガッツポーズも飛び出したが、試合後は冷静に勝利を噛み締めた。

「勝てばみんなが救われますし、お客さんも喜んでくれるので。それが一番じゃないですか」

 チームは試合前まで4連敗を喫して勝率は5割。負ければ借金生活に転落となる一戦だった。中村晃もチームの雰囲気を「良くはないんじゃないですか」と語る。空気を一変させる、唯一無二の薬は勝つしかない。「勝っていかないと(雰囲気は)良くはならないと思います。こうやってなんとか勝てれば次につながるので、どんな試合でも諦めずにやるのが大事だと思います」と足元を見つめた。

 まだチームとしても戦い方を模索するシーズン序盤。ただ、重苦しい空気に陥る中で、後輩たちに“言いたいことがある”とキッパリと表現した。

「いっぱいありますよ。あったら言います。なかったら言わないですし、まずは自分のことをしっかりとできるように」

 言葉よりも背中で引っ張るというイメージだが「気になるので、言いたいことは言います。それもタイミングがあると思う」と続けた。具体例を挙げることはなかったが、思うところがありげな表情だったのは確か。「引っ張っていこうとかではないですけど、自分がやりたいようにやっています」。内野ゴロでも一切手を抜かずに一塁まで全力疾走していた。まずは自分が、しっかりとやるべきことをやるという姿勢を示した。

「こんな感じじゃないですか? ずっと出て、打ち続けるしかないと思います。(調子の波も)多少はやっぱりありますよ。それを何とかして、1本ずつ出していくっていうだけです」。チーム内の自分の役割も、冷静に捉える中村晃。チームが苦しい時こそ、中村晃が頼もしい。

(竹村岳 / Gaku Takemura)