危機感にじむ首脳陣に「まだ5月ですよ」 工藤&城島の“レジェンド”が問題なしと言うワケ

ソフトバンク・城島健司会長付特別アドバイザー(左)と、工藤公康氏【写真:竹村岳】
ソフトバンク・城島健司会長付特別アドバイザー(左)と、工藤公康氏【写真:竹村岳】

「いいんじゃないですか、別に。バタバタ慌てる必要はない」

 ソフトバンクは4日、オリックス戦(PayPayドーム)を迎えた。試合前のセレモニアルピッチに登場したのは、前監督でもある工藤公康氏と城島健司・会長付特別アドバイザー。工藤氏の現役時代をほうふつとさせるフォームから繰り出されたボールは、城島アドバイザーが構えるミットに収まった。

 この日は「ダブルアニバーサリーデー」。球団創設85周年とPayPayドーム開業35周年を記念し、特別な演出が球場を包んだ。2人は現役時代の47番と2番のユニホームで登場。工藤氏は「ここで暴投を放るわけにはいかないという緊張感がありました。その緊張感が最終的にストライクになったので、ファンの皆さんのおかげです」と頭を下げていた。

 工藤氏は2015年から7年間、ホークスの監督として指揮を執り、5度の日本一を経験した。城島アドバイザーも現役時代に常勝時代を築き、今もグラウンドに姿を見せては選手にヒントを与えている。ダイエー時代からホークスを強くしてきた2人は、4連敗中と苦しむチームの現状をどう見ているのか。

 まず城島アドバイザーが「まだ5月で、12勝12敗ですか。いいんじゃないですか、別に。バタバタ慌てる必要はない」と切り出す。そして「元監督に聞いた方がいいんじゃないですか」と工藤氏に“パス”を出すと、勝負師らしい考えが帰ってきた。

「同じ意見です。これで上との差が6ゲームも7ゲームも開いているわけでもないし、主力に怪我が相次いでいつ帰ってくるのかわからないとか、そういう状況でもない。最終的に優勝するかしないかは、トータルなので。トータルでものを考えれば、まだ30試合もいっていない中で『どうですか』って言われても。『どうも』(しない)って感じです。トータルで見てもらえたら」

 藤本博史監督が4月22日のロッテ戦(ZOZOマリン)の試合後、「今日はなし」と取材対応しないなど、首脳陣にはピリピリした空気が漂っている。別角度からチームを見守る2人は声を揃えて、何も心配する必要はないと言い切った。今は自分たちの戦い方を定着させる時だ。城島アドバイザーは報道陣に向かって「知らないんですよ」と顔を向けると、こう続けた。

「99年以降、最近の強いホークスしか取材していないでしょ? なめたらあかんすよ! 『この時期に借金がないなんて、優勝するんじゃないか』ってくらいひどかったんですから、ダイエーは。20何年Bクラス、なめたらあかんよ! こないだも拓也(甲斐)が、チームは貯金があったんですけど『こんなに勝てないんですかね』って。あの時のダイエーなめんなよって」

「そういうふうに変わったんですよ、ホークスは。街の人もそうですよ、優勝を誰も疑わないチームになった。本当に嬉しいことですし、僕がプロに入った時はジャイアンツの帽子を被っている子どもが多かった中、今は街を歩いていてもみんなホークスの帽子を被っている。それは王会長が望んで、やりたかったことですから」

 常勝軍団を目指していたプロセスも知っている2人だから、説得力がある。今は現場を離れている工藤氏も「野球は、勝つ時も負ける時もある。トータルで見てもらえたら、きっと秋にはみんなで笑顔になれるんじゃないかなと思います」とエールを送った。ファンの方々はもちろん、OBもホークスの底力を信じている。

(竹村岳 / Gaku Takemura)