ソフトバンクは12日、PayPayドームで行われた日本ハム戦に5-2で勝利した。2回無死一、二塁で今宮健太内野手が一塁前に犠打を成功させ、通算350犠打を達成した。その後、甲斐拓也捕手の先制の中前適時打が生まれ、個人としてもチームとしても価値のある犠打となった。「藤本監督、秋山監督、工藤監督と多くの試合に使っていただいた結果だと思います」と球団を通じてコメントした。
350犠打は歴代4人目の到達で、現役選手では最多だ。試合後も「コメントの通りですよ」と感謝を口にした。文字通り、チームのために自分を犠牲にしてきた数字だ。「最初は使っていただいて、まずはそこができていたからこそゲームに出られていたところもありました」と、レギュラーをつかむための最初の武器が犠打だったと振り返る。
「これを達成したいと思っていたわけではないですけど、ゲームに出られているっていうところで評価はしてもいいのかなとは思います」
近年の今宮にとって、犠打を数多く決めるというのは理想の選手像ではなかった。犠打よりもヒッティングの方が得点につながる確率が高い。自分も首脳陣もそう思えるだけの打力向上を目指してきた。その考えは今も変わっておらず「最初はバントがチームのためになる満足感もありましたけど。今はそれよりもああいうところで打たせてもらう成長をしたいとずっと思っている」と心中を明かした。
今季から近藤健介外野手が加入したことで、打線の厚みが増したことは当然理解している。1番の周東佑京内野手にはじまり柳田悠岐外野手、栗原陵矢外野手、牧原大成内野手ら強力な上位打線がいるだけに、今宮も「現状を見ると、下位打線から上位につないでいくのが大事。投手がいいだけに点を取って積み重ねること」とチーム状況に応じ、出たサインを遂行できるだけの準備は絶対に怠らない。
プロ野球選手といえど、犠打が苦手な選手もいる。大分・明豊高時代は通算62本塁打を放ったが、プロでは「名手」と呼ばれるだけの印象を定着させてきた。犠打において大事にしていることを問われると「難しいですね……」。しっかりと考えた末に、技術的に大切なことを明かした。
「バットは引かないですね。受け止めるイメージはしています。押さない、引かない、受け止めるというイメージです。(350犠打を決めたシーンも)1球目は引いたから失敗しているし、ボールは手前で跳ねてファウルになっている。成功した球は受け止めたから、ある程度打球も“死んで”いますし。だからあんまり打球を殺そうとかは考えていないですね」
当然、犠打なら塁上の走者をしっかりと把握して一塁側なのか三塁側なのかを判断しないといけない。「タイミングがマッチすれば、ある程度は決まる。相手の投手が細かく動くっていうのも多くなってきているので」と今宮自身の技術も成長して、犠打を成功させている。そして付け加えるように「あとはメンタルです!」と力強く言い切っていた。
オープン戦では打率.189と苦しんだが、シーズンでは打率.226と少しずつ形になってきた。「オープン戦は迷走していて、めちゃくちゃ不安なまま開幕に入っていた。やっと今、これだなっていう感覚が出てきている」と調子の推移について語る。誰よりも“自己犠牲”してきた今宮だから、その背中に後輩がついていく。