レギュラーに対する強い気持ちが垣間見えたシーンだった。ソフトバンクは9日、西武戦(平和リース)に3-1で勝利した。「5番・二塁」で出場した牧原大成内野手は死球を受けて途中交代となったが、自らの足で歩いてバスに乗り込んだ。「大丈夫です」と力強く言い切っていた。
先制の絶好機で回ってきた。4回1死一、三塁で打席に立つと、マウンドには左腕エンスだ。3球目、143キロのツーシームが背中を直撃した。スタンドからはどよめきが起きたが、プレーは続行。5回にも1死一、二塁で打順が回ってきたが、ベンチは代打にフレディ・ガルビス内野手を送った。この采配に牧原大は「なんとか打ちたかったので、正直イラッとした」という。
途中交代となり、注目を集めたのはベンチでのやり取りだ。藤本監督が、ベンチに帰ってきた牧原大と肩を組み、何かを伝える。指揮官の左手でユニホームの背中を引っ張られながらも、振り切るように牧原大がベンチ裏に引き上げていくシーンがあった。「あいつ痛いって言わないんです。こっちで止めないと、肩甲骨やからバットを振ったら痛いはず」と、交代は指揮官の“親心”。離脱されては困るから交代させたわけだが、牧原大のグラウンドへの執念が上回っていた。
牧原大は昨季、打率.301と活躍したが規定打席にはわずか2打席足りなかった。周囲がどれだけ存在感を評価しても、規定打席というレギュラーとしての1つの“勲章”に、誰よりもこだわってきた。「これで休んだら、それがまた響いてくるかもしれない」。結果的にガルビスは凡退したが、どれだけ活躍しても安心することはない。今季が13年目、ホークスというチームをしっかりと理解しているからこそだ。
「層が厚いので、どこで誰が出てくるのか分からないですし。今日もいきたい気持ちがあったんですけど。大事を取ってということだったので。その中でガルビスが結果を出していたら次ガルビスが使われるかもしれない。危機感は常にあります」
試合後はアイシングをして、帰りのバスに乗り込む時も「今も痛いです。めっちゃ痛いです」と本音を明かす。それでも週明け以降の出場は「当たり前じゃないですか。絶対にいきます。気持ちでいきます」と即答した。こんなにも強い気持ちを持って、牧原大成はグラウンドに立っている。