「ロスを少なくした方がいい」オフにフォームを改造
育成2年目の右腕が驚異の三振奪取能力を示している。進化の跡を見せるのはソフトバンクの瀧本将生投手だ。3日にタマスタ筑後で行われた宮崎サンシャインズとの4軍戦。3点を勝ち越された6回1死一、二塁のピンチでマウンドに上がり、2つの空振り三振を奪って見事、火消しに成功した。
ファームとはいえ、圧倒的な奪三振数を誇っている。今季ここまで実戦で5回2/3を投げて14個の三振を奪う。実に17アウト中14アウトが三振だ。奪三振率は驚異の22.2。「真っ直ぐが去年と比べて圧倒的に良くなった。そのお陰もあって真っ直ぐで押せているので投球も組み立てやすいですし、三振が増えました」と手応えを感じている。
元々、三振奪取は多い方だったが、1試合に換算して22奪三振は驚異的だ。これまでの三振はほとんどが自慢のスライダーを決め球に奪ったものだったが、今年の瀧本は、手応えを感じている直球でも三振が取れるようになった。
オフに瀧本は思い切って投球フォームを改造した。「簡単に言うと、武田翔太さんみたいなフォームに思いっきり変えて、そこから自分の投げやすいように、ちょっとずつ合わせていった感じです。元々(武田さんと)ちょっと似ているなという部分があったので」と、先輩である武田翔太投手を参考にフォーム作りを行ってきた。
瀧本はプロ1年目の昨季、自身のボールの弱さを痛感した。「今までのフォームだと身体が大きくなったところでロスが多すぎるなと思ったんです。ロスを少なくした方がいいと思いました」とフォームを見直すことにした。参考にしたい選手が同じチームにいて、且つ筑後で調整していたということもあって、武田本人に「動画撮らせてもらってもいいですか?」とお願いするところから始まった。
その後、武田は瀧本の様子を気に掛けてくれるようになり、アドバイスもくれた。武田の優しさに感謝すると共に、経験豊富な右腕から学べる貴重な機会を逃してはいけないと、貪欲に質問をしたり、自身の投球動画を見てもらったりした。武田とコミュニケーションを取りながら、良いところは参考にし、そこから自分なりのフォームにアレンジしていったという。
新フォームの手応えは数値にも表れてきた。昨季の最速は実戦で1度だけ計測した145キロだったが、今年は既にブルペンで何度も計測。試合では打者が真っ直ぐに振り遅れるという場面も増えた。去年1年間で真っ直ぐで奪った三振は5個だったが、今年は既に現時点で5個。真っ直ぐが良くなったことで、武器のスライダーにも良い影響が表れた。選択肢が広がったことで投球の幅も広がった。
舞台が3軍と4軍ということもあり、瀧本自身も満足はしていない。とはいえ、昨季から成長著しいことは間違いない。ルーキーイヤーに感じた課題としっかり向き合ってきた成果が、この春、確かな手応えとなっている。
(上杉あずさ / Azusa Uesugi)