球団に進言したサファテの“キャプテン就任” 今もブルペンに生き続けている魂

ソフトバンクで守護神として活躍したデニス・サファテ【写真:藤浦一都】
ソフトバンクで守護神として活躍したデニス・サファテ【写真:藤浦一都】

山田雄大チーフ通訳の連載第3回…中継ぎ陣が感じたサファテの存在

 ソフトバンクの山田雄大通訳は、デニス・サファテ「主将」を進言したことがあると明かす。「外国人ですけど、ああいう人がキャプテンになってもいいんじゃないかと思っていたくらいで、球団にも言ったことがあります」。結果的には実現せず「冗談ではありますけどね」ともいうが、サファテの実績と人望なら十分にあり得る“主将就任”だった。

 サファテがホークスに在籍した2014年から2021年まで、キャプテンマークを着けたのは2015年から4年間務めた内川聖一だけだった。2017年8月、先発投手の早期降板が相次いだ中でサファテが当時の工藤公康監督の監督室に出向き、熱く意見を交わしたのは有名な語り草だ。選手それぞれがキャプテンのような自覚と責任を持ち、グラウンドで力を発揮するのもホークス野球の伝統だが、サファテも自身の生き方で体現していた。

 特に山田通訳が代弁したのは、ブルペン陣の雰囲気だ。2017年にはNPB記録の54セーブを挙げたサファテだが、2018年からは股関節を痛めて手術を受けるなど、少しずつ第一線から退いていった。絶対的な守護神を欠いたことで「中継ぎの投手は、(サファテが)いなくなった後に『デカイな、存在は……』と言っていました」と振り返る。

 2018年なら森唯斗が66試合、鍛冶屋蓮が72試合、嘉弥真新也が67試合登板などブルペンを支えた。2017年と2018年を比較して嘉弥真は「例えるなら、家を取られた感じですね。『どこに住めばいいの?』くらいの感じ。それくらい不安でした」と振り返る。「もし僕らが打たれたとして、守ってくれる、話ができる人がいないのが痛かったですね」と存在感の大きさを語った。

 昨季、ホークスはあと一歩でリーグ優勝を逃した。勝てば優勝という状況の中、10月2日のロッテ戦(ZOZOマリン)で泉圭輔投手が逆転3ランを打たれ、そのまま敗れた。その試合後、嘉弥真は甲斐拓也とともに泉を食事に連れ出した。自分自身を突き動かした思いも、サファテの背中を見てきたからだ。

「僕がああ(泉の立場に)なった場合、サファテもやってくれたと思うんです。率先というか、僕らが引っ張っていかないといけないと思っています。野球をやっている間は、サファテは僕の教科書というか、そういう人なので。僕も打たれたら『次の日は新しい日だぞ』とか言われていたので、僕らがそういう声かけをできたらとは思っています」

 助っ人右腕の意志は、ユニホームを脱いだ今もホークスのブルペンに引き継がれている。サファテの強烈なリーダーシップなら、キャプテンになっていたとしても強いホークスを作っていたに違いない。

(竹村岳 / Gaku Takemura)