高卒3年で戦力外→投手再転向で再出発 育成・小林珠維が始めた支配下復帰への挑戦

ソフトバンク・小林珠維【写真:上杉あずさ】
ソフトバンク・小林珠維【写真:上杉あずさ】

7日の4軍初の対外試合で先発、1回を無安打無失点に抑える

 ソフトバンクの4年目・小林珠維内野手が新たなスタートを切った。7日に九州共立大の野球場で行われた4軍として初の対外試合で、小林はプロ入り後初めて先発登板。1回を無安打無失点に抑え「先発は久しぶりで、どういうふうに調整していたかなと思い出しながらやっていたんですけど、中継ぎにはない緊張感がありました。ブルペンでは荒れていたんですけど、吹っ切れて、マウンドに立ったらいい感じで投げられました」と清々しい表情で振り返った。

「高校の時の投げ方は忘れましたね。忘れたんですけど、何も考えずにしっかりバランスよく投げることだけ考えました」。小林が投手として先発したのは実に3年半ぶりだった。東海大札幌高時代は最速152キロを誇り、高校日本代表候補にも挙がる存在だった。複数球団が投手として熱視線を送っていたが、ドラフトで指名したのは唯一、野手として評価していたソフトバンクだった。

 初めて本格的に野手としてプレーしたプロ3年間で、小林はなかなか思うような結果を残すことが出来なかった。昨秋、高卒3年で戦力外通告を受け、今季は育成選手として再契約した。この再出発を機に投手再転向を志願。昨秋のキャンプから投手の練習を始めたが、その時は野手と両睨みだった。しかし、自主トレは投手の練習に専念し、春季キャンプでも、ほとんど時間を投手の練習に費やした。

「もうほぼ野手はやっていないです。キャンプでも自分でマシンを打ったりはしていましたが、全体練習で(野手練習をしたの)は3回くらい。春のスタートがいい感じなので、それも踏まえて、そっち(投手)に行ければなと」。気持ちは投手一本へ、より一層固まった。

 キャンプ中は首を傾げながらブルペンで投げる場面もあった。3年半のブランクは大きかった。ボールを投げることでしか取り戻せない感覚を繰り返し練習してきた。“野手投げ”から投手らしさも取り戻してきた。この試合では最速149キロをマークし「順調に上がってきています。(150キロまで)もうちょいだったんですけど」と笑みがあふれた。

 まだまだスピードは上がりそうで、小林は「僕みたいな右の上手投げタイプだと、球速が出ないと通用しないので」と球速へのこだわりも見せる。内野手から投手への登録変更も考える右腕。新たな挑戦をする“小林珠維投手”が徐々にベールを脱ぐ。

(上杉あずさ / Azusa Uesugi)