1年に1度しかない緊張の瞬間だった。ソフトバンクの藤本博史監督が21日、大関友久投手に開幕投手を託したことを明言した。3月31日、ロッテとの開幕戦(PayPayドーム)で先発することになり、大関にとっては初の大役。「すごく光栄に思います」と心境を語った。
コーチ室で、指揮官からかけられた言葉は「開幕、いくぞ」。同席した斉藤和巳投手コーチからも「頼むぞ」と託された。「監督もずっと候補に挙げてくれていたので。言われた時にしっかりと自信を持ってマウンドに上がれる準備をしようとやってきました」とキャンプでの過程を振り返る。最善の準備を重ねてきたつもりだ。
「監督に告げられるときの(大関の)表情が見たかったので、ずっとコーチ室で待機していました(笑)。監督と話していて俺には背を向けていたから、その瞬間の表情は見ていないけど。監督に告げられた後に『ゼキ、おめでとう』って言ったらニコッとしていたので。いい笑顔をしていましたよ」
斉藤和コーチは現役時代に4度、開幕投手の経験がある。その年を象徴する投手が立つマウンドだ。「初めてのことなので、緊張すると思います。ゼキには『緊張して当たり前だから。それまでの時間をまず楽しもうか』という話はしました」と助言を送ったという。背負いすぎることはなく、等身大の大関のまま、開幕のマウンドに立ってほしい。
特別な試合であることは間違いないが、長いシーズンの1試合という受け取り方をする選手もいるだろう。初めて背負う大役に対して、大関はどのようなスタンスで臨んでいくのか。「両方あると思います。大事な1試合ですし、スタートの1試合。特別な感じがすごくします。緊張感というか、しっかりやらないといけないという気持ちが一番強いです」と背筋を伸ばした。
2020年育成2位で仙台大からソフトバンクに入団。2021年に支配下登録されると、2022年は開幕ローテ入りをつかんだ。着実なステップは、開幕投手という段階にまでたどり着いた。「そこまで明確に青写真を描いてきたわけではないですけど。すごく順調に、期待に応えられるようにっていうのに集中しています」と強調する。チームの優勝はもちろんだが、今季掲げる目標は沢村賞。そこへの確かな一歩目が、開幕戦だ。
「ものすごく期待していただいているんだなっていうのと、すごく光栄なことだと思います。しっかり結果を残すことに集中したいと思っています」
口数はあまり多くない。それでも開幕を託され、燃える思いが言葉からも表情からも伝わってきた。千賀滉大投手、石川柊太投手らに続いて育成出身での開幕投手にも意味がある。2023年の初戦、胸を張ってマウンドに立つ。