「予定より遅れはしたんですけど、投げ始めてからは上り調子」
経過は順調だ。右肘の手術からリハビリ中のソフトバンク・奥村政稔投手が一歩ずつ復帰への階段を上がっている。17日にはタマスタ筑後で術後初めて打撃投手を務め、また一歩前進。躍動感あるフォームでボールを投じて、手応えを感じるマウンドとなった。
昨季、奥村はプロ初先発を経験。初勝利こそ惜しくも逃したが、ファームでコツコツ積み上げてきたものを1軍の舞台で発揮し、存在感を示した。だが、9月半ば、3度目の先発マウンド直前に右肘を故障し、鏡視下関節形成術を受けた。術後のリハビリ期間ということもあって、オフに球団から戦力外通告を受け、育成での再契約を結んでいた。
打者に投げるのは術後初めて。「12月くらいに風邪を引いて、予定より遅れはしたんですけど、投げ始めてからは上り調子で来ています」と笑みを浮かべた奥村。40度の熱が3、4日続き、体重も6キロほど落ちるなど、思わぬ体調不良に見舞われ、体力が戻るのに1か月ほど要したが、体調が戻って以降は順調に来ている。
「次のクールかその次のクールにシート打撃に登板して、良ければその後は試合で投げられると思う」と、視界には実戦復帰も見えてきている。「風邪さえなければ、キャンプも行くつもりでいました」と早期復帰を目指していた。トレーナーに「ペースが早すぎる」と制されるほどだった。「トータルで見たら順調じゃないですかね」。1か月前までは患部の痛みを感じることもあったが、現在は異常はないという。
リハビリ組で過ごす時間は4か月を超えたが、その中でしっかりトレーニングを積み、筋量も増えた。「元々、筋トレで重量を上げるのは得意だったんですけど、それをスピードに変えないといけなかったので。重いものを速く使うトレーニングには力を入れてきました」。リハビリ担当にも積極的に質問しながらトレーニングに取り組み「いい練習ができているなという感覚はあります」と手応えを感じている。
長いリハビリ生活であろうと、奥村は変わらぬ姿を見せてきた。「そこらへんは歳なので。若い子と一緒にやっていますけど、自分結構言うんですよ。『ちゃんとやれ』とか『挨拶しっかりしろ』とか。そう言って自分の気を引き締めている所もありますね」と“兄貴分”として精神面でも頼もしさを見せる。「2軍の開幕には間に合わせる。そこでローテで投げられるように」と1か月後のウエスタン・リーグ開幕に照準を合わせる。1日でも早く2桁の背番号を取り返すつもりだ。
(上杉あずさ / Azusa Uesugi)