ソフトバンクの三笠杉彦取締役GMが単独インタビューに応じ、今オフの大補強の真意や補強戦略の在り方、チーム内競争、さらには球団が掲げる世界一に向けた構想について語った。インタビューの第1弾は近藤健介外野手、ロベルト・オスナ投手獲得の狙いについて。
昨季最終戦でリーグ優勝を逃したソフトバンク。2年連続で頂点に立てず、今季は3年ぶりのリーグ優勝が球団としての至上命令となる。そのため、このオフは大補強を敢行。その目玉となったのが日本ハムからFA権を行使した近藤と、ロッテから自由契約となったオスナの獲得だった。近藤は柳田悠岐外野手の前を打つ2番か3番、オスナは新たな守護神に配されることが確実で、今季のホークスの命運を握る存在となる。
昨季、ホークスでは柳町達外野手や正木智也外野手らが頭角を表し、今後に期待を抱かせてくれた。陣容豊富な外野手に、さらに近藤という球界屈指の好打者を加える必要性はどこにあったのか。三笠GMは1つ目の狙いとしてこう語る。
「僕らは近藤選手を日本を代表するアベレージヒッター、“超一流”の選手だと、かねて評価をしてきました。当然、補強するときには、今伸びてきてる若い選手との兼ね合いにはなるんですが、近藤選手は10年か20年に1人の選手。ですので、FAのマーケットに出てくるのであれば、それはもう獲りに行く選手であると評価をしていたわけです」
このオフに限らず、これまでも超一流の打者として近藤のプレーを注視してきた。その能力は10年、20年に1人の逸材。若手が育ってきているとはいえ、これほどの打者がFA権を行使し、市場に出てくるのであれば、獲りにいかないわけにはいかない。プレーだけでなく、その姿勢も、今後ホークスを担う若手たちの良きお手本となる。リーグ優勝奪還のために不可欠な選手として獲得に乗り出した。
もう1点はホークス打線にとって“足りないピース”だったとも三笠GMは挙げる。「ラインナップを考えたときに、スピードのある選手はたくさんいますし、手前味噌ですけども、パワーのある選手というのもいる。それをジョイントする選手がいると、要するに走者を返す、自分が出るというだけではない相乗効果が出るなと思っていた。近藤選手に入ってもらえると、破壊力のあるラインナップができるんじゃないかというふうに評価をしました」。
打線は“線”である。周東佑京内野手や牧原大成内野手、三森大貴内野手のような足の速い選手や、柳田悠岐外野手や新加入のコートニー・ホーキンス外野手、リチャード内野手、正木智也外野手といった中長距離砲もいる。多士済々の中でチームのピースとして欲しかったのは、近藤のように塁に出ることも、走者を返すこともでき、長打も打て、高い出塁率を誇る万能な線を“繋ぐ”打者だった。
三笠GMが思い描くのは近藤の師匠でもある長谷川勇也1軍打撃コーチや、ベテランとなりつつある中村晃外野手がこれまで担ってきたような役割だ。「長くそういうチームを作っていくときに、近藤選手は必要だなというふうに思いました」。今季だけでなく、向こう数年間、中長期的な視点で見たときにも、近藤という存在は是が非にでも必要だった。
あえて若手が数多くいる外野手での補強となったが、そこへの球団としての考えも明確だ。「攻撃力というのが考えるプライオリティで一番というのが、セイバーメトリクスを前提にして編成をするときに基本的には正しい姿勢だと思っています。今のメジャーリーグなどの趨勢で言うと、オフェンス力を前提にして編成をして、その後に守備の配置について考えるというようなスタイルであるというのがいいんじゃないかと思っている」。
あくまでも大前提にあるのは、いかにチームの攻撃力を上げていくかという点。そこを整備した上で、例えば今季で言えば、栗原や正木といった選手のように、外野手だった選手を内野手に回すなどして守備配置は整えればいい。そもそもの考えとして“外野手が多くいるから外野手は獲らなくていい”という考えにはならないのだ。
もう1人の目玉であるオスナはどうか。実はホークスはロッテに加入する以前から、オスナの動向を注視していた。昨季途中から守護神を務めていたモイネロに不測の事態が起こった場合などに備えてのことだった。「メジャーで実績のある選手ですから、そういう意味ではチェックをした選手の1人であります」と三笠GMは語る。
このオフ、千賀滉大投手がホークスからメッツへと移籍。エースがチームを離れたのは大きな痛手となるのは間違いなかった。そのため、球団内でも今季に向けた投手陣編成のテーマは「先発陣を充実させる、整備をするというのがポイントの1つ」(三笠GM)だった。実際に元阪神のジョー・ガンケル投手、さらにはレンジャーズから自由契約となっていた有原航平投手も獲得。こちらも分厚い戦力強化を施した。
実はオスナの獲得にもこの“先発陣強化”の意味合いが反映されているという。もちろん盤石のリリーフ陣を構築するというのは大前提ながら、三笠GMは「中継ぎもできれば先発もできるという両方の適性があるんじゃないかと言われている投手も多くいる。中継ぎ、抑えで信頼できる選手に来てもらうことで、そういう選手を先発にスイッチし、先発陣の増強を図る意味でも効果があると判断した」と明かす。
実際、昨季は8回を担った藤井皓哉投手が先発へと転向。森唯斗投手、板東湧梧投手、椎野新投手、高橋礼投手といった面々も先発候補として調整を続けている。首脳陣の中で現状の先発候補は12人。オスナの加入で8回モイネロ、9回オスナの構想が固まっているからこそ、これだけの人数が先発候補として競争することができている。
間違いなく、リーグ優勝奪還に向けて超重要なピースとなる近藤とオスナ。オフの大補強の目玉となった2人の獲得には、こうした狙い、意図があった。第2回では補強の際に、ホークスが求める選手像と評価基準に迫る。