待望の“今季1号”にも笑顔なき理由 栗原陵矢が今立ち向かっている復活への障壁

シート打撃を行ったソフトバンク・栗原陵矢【写真:竹村岳】
シート打撃を行ったソフトバンク・栗原陵矢【写真:竹村岳】

シート打撃で本塁打を放つも「バッティングの状態は良くない」

 ソフトバンクの栗原陵矢外野手が12日、春季キャンプ3度目のシート打撃で“今季1号”の本塁打を放った。高橋礼との対戦で、3ボールからの真っ直ぐを完璧に捉えた打球は右翼スタンドへ。ただ、待望の1本にも「バッティングの状態的にも良くないと思います。練習をやっている感じは良くない」と、表情は冴えなかった。

 昨季開幕直後に左膝の前十字靭帯を損傷する大怪我を負い、シーズンを棒に振った栗原。長くつらいリハビリの末に患部は回復し、この春季キャンプではフルメニューを消化しているが、投手の生きたボールを見るのは、ほぼ1年ぶりのことだ。バッティングの状態が戻るのは、そう簡単なことではなく、今は必死に感覚を取り戻す作業を繰り返しているところだ。

「今日のランチ特打とか酷かったですね。全然良くなかったです。見逃し方がまず悪い。あとは自分の振りたい振り出しのタイミングとインパクトの時の力の入っている感じが合っていない」。頭で思い描くフォーム、タイミング、スイングと、実際の体の動きにはまだズレがある。そうした感覚があるからこそ、シート打撃で本塁打が出たところで、満足はできないのだ。

 この日の練習中には藤本博史監督と話し、助言を貰った。「合ってない分、うまいこと打とうとして、力が入ってるのかなと思って、あんまり振らないようにはしていたんですけど、そうなってくるとあまりゲームでは使えないのかなとは思っていました。(監督とは)大きく体を使ってちょっと打ってみようというか、あまり小さくティーでも打たず、ホームラン狙っていいんじゃないのっていう話をして、大きくタイミングを取って大きく振ることは意識してやりました」と栗原は明かす。

 とはいえ、まだまだブランクを埋める作業はこれからも続く。「ピッチャーの球がすごく速く感じますし、変化球とかは見ていないので、対応は難しいなと思っていますけど、そこに対してうまくアプローチしようとはせず、しっかり自分のスイングができるようにと今思ってます。しっかりと振って当たった打球に対しては自分の中では良くなってると思ってるんで、そこが徐々に多くなればと思ってます」。納得のいくスイング、納得のいく打球が出る確率を上げていくことが、これからの課題になる。

「怪我しないように1か月乗り切りたいと思いますし、もうオープン戦がどんどん始まってくると思うので、終盤に入ったらそこまでにはしっかりと自分の形っていうものを作っていきたいと思います」と残るキャンプ期間に思いを巡らせる。完全復活にはまだ道半ば。今季から副キャプテンに就任した男は、地道に段階を上げていこうとしている。

(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)