仮契約結んだドラ3・甲斐生海の登録名は「生海(いくみ)」に決定
ソフトバンクからドラフト3位指名された東北福祉大・甲斐生海外野手が24日、仙台市内のホテルで仮契約を結んだ。契約金6000万円、年俸1000万円(金額は推定)。チームには正捕手の甲斐拓也がいることから、登録名を「生海(いくみ)」とすることも決まった。「普段から“いくみ”と呼ばれることがほとんどで、“甲斐”と呼ばれることはあまりないので、うれしいです」とうなずいた。
「アピールポイントは長打力」と言い切る右投げ左打ちの長距離砲。東北福祉大の野球部関係者は「1年生の頃から既に、ウチの名だたるOBたちが練習を見に訪れた際、生海の打撃練習には足を止めて見入っていました。和田一浩(西武、中日で活躍し通算2050安打、319本塁打)が『僕の大学時代よりずっと上』と言い切っていたほど。飛距離はウチの大学史上、明らかにNo.1です」と証言する。
東北福祉大といえば、通算476本塁打で元阪神監督の金本知憲氏、和田氏、前阪神監督の矢野燿大氏、現東北福祉大監督の大塚光二氏ら過去57人をNPBへ輩出(育成を含む)。今年のドラフトでも生海を含めて支配下2人、育成1人が指名されたのだから、そのレベルの高さがわかる。
大学1年の冬には父の和美さん、同居していた祖父と曾祖母を立て続けに亡くし、ショックで2、3年生の2年間はリーグ戦出場なし。この間に体重は85キロから76キロまで落ちた。しかし、最終学年を迎えるにあたって一念発起。猛トレーニングと食事で、体重は20キロ増の96キロに。仮契約に同席した母の真紀さんは「つらい時期もありましたが、私だけでも生海を信じていようと考えていました」と感慨深げに振り返った。
ソフトバンクの福山龍太郎アマチーフスカウトは「(体重増に伴い)この数か月でまた急激にパワーがついてきた。もともとバットがミートポイントまで最短距離で出て、それでいてスイングアークが大きいので、しっかり当たれば物凄い飛距離が出る。最近は泳いでも、こすってもフェンスを越えます」と目を細める。
今秋の仙台六大学リーグ開幕を前に「今年プロから指名されなかったら、野球をきっぱりやめる」と宣言した。結果的に3本塁打、16打点でリーグ2冠に輝き、打率も.405。「覚悟を持ってやったことが結果につながったのではないかと思います」とうなずく。2年間の事実上のブランクがあったため「育成かなと思っていた」と言う指名順位も、支配下の3位と予想以上だった。
プロでベールを脱ぐ長打力が楽しみだが、守備は「大学では一塁と右翼を守りましたが、自信はないです。練習しないと」と苦笑い。一方、「サッカーを見るのが好きなのですが、昨日(23日)はワールドカップで日本がドイツに勝った試合を見逃しました。見たかったのですが、ゲームに夢中になって、いつの間にか時間がたっていて……」と屈託なく明かす愉快な一面も。かつて西武で外野手として活躍した大塚監督からは「1、2年間は遊ばず、野球に集中すること。いっぱい練習しろ」と言い聞かされたとか。スケールの大きさを感じさせる好漢だ。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)