シーズン後に考えたチーム内での立ち位置「僕はやっぱり低い」
宮崎市の生目の杜運動公園で行われているソフトバンクの秋季キャンプ。第2クール2日目となった9日、キャンプでの“変化”を感じさせたのが、復活を目指す甲斐野央投手だった。
甲斐野はキャンプにテスト参加しているコートニー・ホーキンス外野手のために行われたシート打撃に登板。米独立リーグ2冠王の新助っ人候補を相手に、8打席で安打性の当たりを許さず、逆に4つの三振を奪った。課題の制球のバラつきもなかったが、甲斐野自身は「自分の課題のことだけを考えていました。練習の成果っていうのはまだまだ足りないなって、出てないなというような感じはあるんですけど。狙ってこうやっている方向性というのは合ってると信じてやり続けていきたい」と振り返った。
「自分をコントロールしたい。やっぱり、どうしても力んじゃう癖があるんで、そこを自分の中でどう抑えようかっていうのを考えてやっていこうと、(斉藤)和巳さんとも話して、そこは意識してやっています」。力みを無くした投球フォームでフェニックス・リーグ、そして、この秋のキャンプとボールを投げている。この日のシート打撃も全力ではなかったものの、最速は150キロをマークしていた。
新たに就任した斉藤和巳1軍投手コーチからのアドバイスも取り入れ、フォームの矯正を行っている。斉藤和コーチからは「力む方は簡単」「力まずしていい球を投げるか。自分のフォームができれば、自然とボールにコミットしていく」などと教わった。それを受けて「いい球を投げようとしてるんじゃなくて、今は、悪い球でもやろうとしているフォームができるようにというふうに考えています」と意識を変えた。
今シーズンが終わり、甲斐野は自分を見つめ直した。藤本監督の立場になってチーム内での自らの立ち位置を考えたという。「使う順位でいうと僕はやっぱり低いっていうのを、自分でもすごく感じた。やっぱり、今年投げた藤井、松本、泉とか、モイネロ、又吉さんも、嘉弥真さんもみんなどんどんレベルが上がっている中で、僕って“停滞している”なって、凄く感じていた。そこの悔しさがすごいあった」。この悔しさが自分を変えようというエネルギーに変わった。
「正直、投げていてバッターと対戦できてなかった。自分との戦い次第な感じがした。自分に自信を持てないとマウンドに上がっても、パフォーマンスを出せない。自信を得るためにはどうしたらいいかと考えたら、もう練習しかない。もうやるしかないやろって思った。空回りするかもですけど、来年にかける思いっていうのはプロに入ってから一番強い」。来季はプロ5年目。言葉の端々に覚悟も滲む。
この日の投球は斉藤和コーチも高く評価した。「監督からもお褒めの言葉をいただいた。彼は今、このキャンプでね、自分でやろうとしてる課題をずっとコツコツやってるんで、それが少し出せたのかなっていう。監督はいい調整してるなって。でも、ここで抜群の調整をされてもね、って話はしましたけど。本人も少し手応えを感じてくれたらなという感じはします」と、ここまでの取り組みによる変化を感じ取っていた。
シート打撃を見守った藤本博史監督も「あれだけの球を投げるんだから、6回、7回ぐらい投げてくれて、そこで固定させてくれたらありがたい」と期待する。2019年は勝利の方程式を担った甲斐野。その後は怪我もあって、苦闘の日々を過ごしてきた。5年目を迎える来季、完全復活を遂げた姿を見せてほしい。
(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)