4日に行われた3軍交流試合・アストロブレーブス戦(ルートインBCリーグの茨城と栃木の合同チーム)で1人の高卒育成ルーキーが好投した。19歳の右腕・瀧本将生投手。緊急登板となったが、3回を1安打無失点に封じた。
出番は突然やってきた。先発の大城真乃投手が3回、先頭打者の打球を頭部に受けて緊急降板。この緊急事態でマウンドに上がったのが瀧本だった。「6回くらいから登板する予定でしたが、頭に当たった瞬間に『作れ』と言われ、ちょっと緊張しました」。慌てて肩を作り出すと、そのままマウンドへと向かった。
「焦らなくていいよと言われたけど、本能的に早く作らないとと焦っちゃいました」と瀧本は言う。3回無死一塁でマウンドに上がると、走者に二盗を許し、右飛と二ゴロで得点を許したものの、冷静にアウトを重ねた。その後は得点を許さず、瀧本は3イニングを1安打無失点に抑えた。
小川史3軍監督は「ナイスピッチングだったよ。代わりっぱなの難しいところをね。初球もストライク入ってたし、よかったな」と評価し「あとはテンポ。2回以降、テンポを早くするように言ったけど、テンポが野手のリズムを作るのでね」と課題も口にした。瀧本自身も「ある程度まとまった投球ができたと思います。なかなか出来る経験じゃない」と、突然の緊急登板も1つの経験として意気に感じていた。
瀧本は市立松戸高から2021年育成ドラフト11巡目で入団。公立高校出身で、同校初のプロ野球選手になった。高校時代に投手に転向し、投手歴わずか2年半でプロ入りを果たした原石だ。ポテンシャルは評価されているものの、経験値はまだ少ない。ただ、瀧本の良さの1つに“タフさ”がある。
今季の3軍は四国遠征、北海道遠征、関東遠征など例年以上に多く試合が組まれていた。その中で最も登板を重ねてきたのが高卒1年目の瀧本だった。3軍では最多となる37試合に登板し、3勝3敗3セーブ。しかも、3軍遠征で唯一の“皆勤賞”だという。登板予定のない投手やコンディションが整っていない投手などは筑後に残留し、トレーニングや練習を行うのが通例だが、瀧本の場合は主に中継ぎとはいえ、全遠征に帯同した。
高卒1年目の選手が、怪我やコンディション不良で離脱することなく、身体作りを並行しながら、実戦登板を重ねていけるのは珍しい。瀧本は「他の球団だったら投げられる状態でも投げさせて貰えなかったと思う。ホークスでは投げられる状態だったら、どんどん投げさせてもらえるので、最近はそのお陰かまとまりのある投球というか、少しずつ結果を残せるようになってきました」と話す。
3軍制を敷き、さらなる拡大を目論んでいるホークス。3軍の試合数も年々、増えており、怪我さえなければ高卒ルーキーであろうと、実戦経験を多く積むことが出来る。「最初は荒れて苦しいところもあったんですけど」と、シーズン序盤は制球に苦しんで自滅してしまうこともあったが、それでもマウンド経験を積み、少しずつ成長を遂げられたというのは、やはり3軍制の賜物だろう。
高校時代は最速143キロだったが、この1年で2キロ更新し、最速は145キロに。持ち味は三振も奪える縦のスライダー。「課題は自滅を無くすことと、球速がないと持ち味の変化球が生きてこないと思うので、真っ直ぐの球速とコントロールです」と瀧本。その表情からは、今季1年の充実感が感じられる。まだ高卒1年目。瀧本がプロの世界でどのように階段を上っていくのか楽しみにしたい。