ソフトバンクは、2日に行われたロッテとの今季最終戦に敗れ、目前のところでリーグ優勝を逃した。パ・リーグ2位に終わり、8日から「パーソル クライマックスシリーズ パ」ファーストステージで西武と戦う。5日から本拠地PayPayドームで全体練習が再開。悔しさを味わい、涙を流した右腕もまた、リベンジに向けて再始動した。今季MVP級の働きをした藤井皓哉投手だ。
マジック「1」で迎えた1日の西武戦。勝つか引き分けでリーグ優勝が決まる一戦で、藤井は同点で迎えた延長11回に登板。2死を奪ったものの、森に中前安打を許すと、山川にはフォークを狙い打たれてサヨナラ2ランを浴びた。引き分けでも優勝していただけに、右腕は人目をはばからず、涙を流した。
「勝てば優勝、引き分けでも優勝という状況の中で、ホームランだけはやめようって海野とも話していたのに、本当に一番やっちゃいけないことをしてしまった。後から考えてみれば一歩引いて自分を見れていなかったなというか……。後で映像を見返したり、海野とも話したんですけど、もう少しどこかでストレートを投げていれば、多少違った結果にもなったんじゃないかな、と。そういう反省もありますし、とにかく悔しいっていう思いでした」
藤井はホテルへ戻ると、藤本博史監督の部屋に向かった。扉を開け、指揮官に翌日のロッテ戦での登板を志願した。この日まで、すでに3連投中だったが、4連投も辞さない覚悟を示した。気持ちを切り替えられたのは、1年前までの記憶を思い起こさせるバス移動の車中だった。
この日は翌日のロッテ戦に備え、ベルーナドームからバスで約1時間半かけて都内のホテルへと移動した。本来であれば、30分ほどのバス移動のはずが、たまたま長時間のバス移動だった。「去年はずっとバスで移動してたので、その長い時間っていうのが去年を思い出す時間になって、すごいいい意味でリセットができた。その時に投げたいというか、このまま終わるとやっぱり本当に悔しいなと思ったので」。バスに揺られた1時間半。不思議と落ち着きを取り戻していった。
昨季は四国ILの高知でプレー。独立リーグの移動はバスが普通で、何時間も車内で揺られることは日常茶飯事だった。「去年の環境から今のこの環境にきて、ありがたみを感じることもたくさんありますし、こういうところで野球ができる幸せも感じました。勝ち負けがあるんで、たまたま僕が打たれて負けてしまったんですけど、そういうふうに悔しがれることも幸せだなって。本当にバス移動の長い時間がいい時間になりました」。NPBで優勝争いの中にいられる現状を噛み締める時間にもなった。
クライマックスシリーズでまず当たるのは、その西武。藤井にとっては山川へのリベンジを果たすチャンスになる。「次、もし山川さんと対戦する機会があれば、抑えるっていう気持ちを前面に出して。相手がいることなんで、打たれることもあるかもしれないんですけど、自分ができるベストを尽くして抑えれるようにやっていきたいと思います」。雪辱を晴らし、まずはオリックスへの挑戦権を掴みたい。