24日に本拠地PayPayドームで行われたロッテ戦で6-0と快勝し、優勝へのマジックを「6」に減らしたソフトバンク。2点リードの4回に、勝利を大きく手繰り寄せる一打を放ったのが中村晃外野手だった。
ソフトバンクは初回、2回と1点ずつを奪ったが、その後の満塁のチャンスを生かせず、2イニング連続で3残塁。12残塁で敗れた前日の悪夢がよみがえる拙攻に満員の本拠地は少しばかり不穏なムードになりかけた。この空気を中村晃が一振りで払拭した。
2死走者なしから柳田が一塁線を破る二塁打で出塁。ロッテベンチは続くデスパイネを申告敬遠して中村晃との勝負を選んだ。中村晃はロッテの先発・二木康太が投じたほぼ真ん中のストレートを強振。打球は大きな弧を描いてライトスタンドへ向かっていった。
打球の行方を見届けた中村晃は左手でポイッとベンチ方向へバットを投げる小粋な“バットフリップ”。確信した表情で一塁に走り出し、お立ち台では「ほぼ完璧でしたけど、あとはファウルになるかもと思っていました。でも真っ直ぐに飛んでくれた」と振り返った。
ふつふつと湧き上がる闘志をバットに込めた。目の前でデスパイネが申告敬遠。「前の打席でも敬遠気味(デスパイネが初球の死球)だったので、敬遠だろうなと思っていました」と中村晃はいう。「『なめんなよ』という気持ちをぶつけた」と問いかけられると、中村晃は少し目元を緩めながら「そういう気持ちがなくなったら終わりだと思いますし、その気持ちは常にあります」とキッパリと言い切った。
試合終盤には、この日で引退する明石健志内野手が代打で現役最後の打席を迎える予定になっていた。「最後の打席は楽しく立ってほしいと思っていました。緊迫したところではなく、余裕のある場面で思い切り楽しんでほしかった。(3ランで点差を広げて)そういう形が作れたのは良かった」。大先輩の登場する舞台をお膳立てできたことにも安堵の表情を浮かべていた。
この日の勝利で優勝へのマジックは「6」となったが、オリックスとの大接戦はまだ続く。中村晃も「全部勝たないと厳しい」と危機感を抱く。最後までヒリヒリする戦いが続くが「しっかり意識して緊張してやるしかないし、意識しないことは不可能。重圧や緊張を感じながらやることが一番素直でいいのかなと思います」と気を引き締めていた。