24日に本拠地PayPayドームで行われたロッテ戦に6-0で解消したソフトバンク。シーズンも最終盤に差し掛かり、疲労もピークを迎える中で、チームも、リリーフ陣も救う“男前”なピッチングを見せたのが、先発した板東湧梧投手だった。
最後は冷や汗をかき、そして安堵の表情を浮かべた。6点リードの9回2死一、二塁で井上が放った打球は右翼への大きな飛球になった。響いた快音に板東は覚悟した。「もう行ったと思ったんで。やってしまった、と」。ただ、打球はフェンス手前で失速。右翼の谷川原のグラブにボールが収まると、板東は思わず「あぶねー」と溢した。
9回を1人で投げ抜き、120球の熱投。ロッテ打線を散発5安打に封じて、プロ入り初完封勝利を飾った。終盤は「しんどかったです」と、いっぱいいっぱい。それでも最後までマウンドに立ち続け「自分の中ではもうとにかく一つ一つ、目の前の打者っていうイメージでいった結果、あんまり実感もないんですけど、それが完投になったって感じです」と振り返っていた。
プロ初完封の好投と、さぞかし好調だったのかと思いきや「調子は良くなかったと思う」と言う。初回、先頭の高部を空振り三振に仕留めたものの、角中、中村に連打を浴びた。「先頭も悪いなりに打ち取れたと思って、次のバッターは調子通り、想定内というか……。今日は打たれるイメージが結構していた」。立ち上がりは崩れてもおかしくない状況にいた。
苦しんでいた板東を救ったプレーがあった。連打で招いた1死一、二塁のピンチ。ここで安田を外角のフォークで二塁への併殺打に仕留めた。「あれが1番だったと思います。自分の中でも運があるんだなと思った」。この併殺打が、その後、ロッテ打線を封じ込める道標になった。
「結果的に逆に開き直って、ゾーンの中で勝負して、打ち取っていった結果、野手の正面であったり守備範囲内で収まってくれたっていう感じです」。9回を投げて四球はわずか1個。三振も5つと少なかったが、ストライクゾーンをしっかりと突き、アウトを積み重ねた。先頭打者には一度も出塁を許さず、投手の鉄則をきっちりと遂行した。
9月10日、同17日とオリックスのエース山本由伸と2週続けて投げ合った。1度目の対戦は5回途中5失点でKOされ、2度目の対戦だった前回登板は負け投手にこそなったが、8回2失点で自身初めて完投した。「(山本投手は)誰が見てもエース。勝ちたいところで勝てる投手っていうのは流れを良くする。制球の面がやっぱり一番ピッチャーとして、勉強になる」。映像を見て学んだりもした。貪欲に投げ合った球界のエースからもエキスを吸収した。
この日、ともにお立ち台に上がった中村晃外野手からも「男前のピッチング」と絶賛された、この日の板東の投球。中継ぎ陣を休ませる内容には藤本博史監督も「ありがたいですよね。今日1人で投げてくれたのは大きいと思うし、これから先も、また長いイニングも計算できるんじゃないかなと思いますね」も手放しで称えた。タフな状況で掴んだプロ初完封。チームにとっては1勝以上の価値がある好投だった。